アトピーと汗

汗は体温を冷やすことを目的として皮膚の汗腺から分泌され、これがアトピー性皮膚炎の刺激になって悪化させることは知られている。

汗腺の自律神経による支配は、交感神経支配であるが、伝達物質はアセチルコリンであり、アセチルコリンは通常なんらかの機序により痛みを引き起こす。 アトピー性皮膚炎の患者の場合はこの痛みがかゆみとして認識されるという。

汗の中にはDermcidinと呼ばれる抗菌ペプチドが含まれて、炎症の原因となるブドウ球菌などの表皮常在菌に対して皮膚を守っている。

Dermcidinはエクリン汗腺で常に産生されているが、アトピー性皮膚炎のヒトの汗は正常人に比べてDermcidinが不足していて抗菌力が弱い。

治療の目的で抗ヒスタミン薬を内服していると、抗コリン作用により発汗が抑制される場合がある。

また、引っかくことによる皮膚の損害や皮膚のバリア機能の低下により、発汗の調整が傷害されている場合もある。発汗が抑制されると体温が上昇し、かゆみがさらに強くなる。

発汗というもの

汗の主要な目的は、体温の調整である。

汗を作り排泄する汗腺には、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類あり、エクリン汗腺で作られた汗は、汗管を通して皮膚表面に排泄され、 アポクリン汗腺の汗管は毛包につながっていて、粘り気のある汗を排出する。

エクリン汗腺は人間の体表面ほぼ全体に分布している(特に手掌・足底が多い)が、アポクリン汗腺は、腋、乳頭、外陰、肛囲に存在し思春期になると働きが活発になる。

エクリン汗の成分は、主に水分であり、それ以外にNaCl(塩化ナトリウム)、尿素、乳酸、ごく微量のミネラルも存在している。

乳酸は皮膚表面を酸性に保つことに関与している。デフェンシンなどの抗菌ペプチドももちろんこの中に存在している。

アポクリン汗は、たんぱく質、脂質、糖質、アンモニア、鉄分などを含み、エクリン汗と異なり塩分はほとんど含まれない。

アポクリン汗そのものは無臭であるが、皮膚表面の常在菌により分解され、臭い(ワキガ)を生じる。

汗関連疾患

疾患名 原因 対策
あせも(汗疹) エクリン汗管が閉塞され、汗が皮膚表面に排泄されずに貯留してしまうことによる 汗を流す、ステロイド、抗生剤
多汗症 精神的緊張により交換神経活動が活発化し、血管が収縮して手足が冷たく湿って紫色になる。遺伝的要因が強い 20%塩化アルミニウム液を1日1回就寝前、自律神経安定剤のセディール、グランダキシンなど
汗庖 汗貯留が原因。掌、足底、手指の側面に突然小水疱が多発し痛痒い。 ステロイド、尿素軟膏
腋臭症(ワキガ) 腋窩のアポクリン汗腺の分泌物が表在性の細菌によって分解され脂肪酸が生じ、表面のアンモニアなどと混ざり合って特有の臭いが生じる。 3%ホルマリンアルコール、20%塩化アルミニウム液、デオドラント剤
熱中症 体内の水分不足により発汗ができなくなり体温が上がることによる。 塩水、スポーツドリンク


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