細菌/真菌/ウイルスの構造

真核生物

真核生物とは、細胞に核を持つ生物の総称です。真核生物のグループには、動物、植物、真菌、および原生生物が含まれます。

真核生物の細胞は、核膜で囲まれた細胞核(=DNAが核膜の中)を持ちます。これにより、DNAが細胞質とは分離されます。

真核生物の構造
動物、原虫植物真菌
核膜
ミトコンドリア
小胞体
ゴルジ体
リボソーム80S(40S+60S)
リソソーム
ペルオキシソーム
微小管
葉緑体×
細胞膜コレステロールエルゴステロール
細胞壁×セルロース
ペクチン
リグニン
βグルカン
キチン

原核生物

原核生物とは、細胞に明確な核膜に囲まれた核を持たない生物のグループを指します。原核生物には主にバクテリア(Bacteria)と古細菌(Archaea)の二つの大きなドメインが含まれます。

原核生物のDNAは細胞質内に直接浮遊しており、明確な核膜には囲まれていません。そのため、DNAはしばしば環状の形をしています。

原核生物の細胞は真核生物に比べて比較的単純で、ミトコンドリアや葉緑体のような膜に囲まれた細胞器官を持ちません。

一般的には独立した環境下で生命活動及び増殖を行うことができるが、クラミジアとリケッチアに関しては例外として他の細胞に寄生しなければ増殖できません。

原核生物の構造
細菌マイコプラズマ
グラム陽性菌グラム陰性菌
核膜×
ミトコンドリア×
小胞体×
ゴルジ体×
リボソーム70S(30S+50S)
リソソーム×
ペルオキシソーム×
微小管×
葉緑体×
細胞膜メソソームあり
細胞壁ペプチドグリカン
M蛋白質(連鎖球菌)
タイコ酸(ブドウ球菌)
ミコール酸(結核菌)
ペプチドグリカン
外膜
×

ウイルス

ウイルスとは、遺伝情報を含む核酸(DNAまたはRNA)と、その核酸を保護するタンパク質のカプシドから構成されており、独立して生命活動を行うことができず、宿主の細胞を利用して自己を複製する生きている生物と無生物の境界に位置する存在です。

ウイルスは非常に小さく、通常は顕微鏡でしか見ることができません。また、形状、サイズ、遺伝情報が非常に多様です。

一般にウイルスの大きさは0.1μm、細菌は1μm、真菌は10μmくらいで、一般的な不織布マスクの間隙が30μm、医療用が5μm、N95が0.3μmと言われており、空気中に飛散して水分などと結合した場合、プラス5μmと見なせるので医療用マスクでも細菌の侵入を阻害することはできる。

ウイルスの構造

細胞小器官の特徴

真核生物において核は、【クロマチン(=染色質)+核小体+核膜】から構成されます。

ここで染色体に注目しますと、人の場合は44+XY=46本あって、それぞれが相同染色体を作るんで(22+1)組の染色体セットが存在してます。

この染色体に異常を生じた疾患には以下のようなものがあります。

  • ダウン症候群(第21染色体が3本ある)
  • ターナー症候群(Xが少なく45本)
  • ルター症候群(XXYでXが一本多く47本)
  • 家族性高コレステロール血症(LDLレセプター遺伝子の突然変異)
  • 慢性骨髄性白血病(フィラデルフィア染色体が出現)

ところで、みなさんよくDNAという言葉を耳にすると思いますが、DNAとは一体なんなんでしょうか。

実は、染色体を構成するものがDNAなんです。

染色体は、DNAとヒストンという蛋白質から成ります。DNAは、螺旋構造をとりながらヒストンの周りに絡まってます。

核様体とプラスミド

これらは原核生物に特有の構造です。核膜がなく、ヒストンもない螺旋構造もとっていません。

染色体=DNAということになりますね。細菌にとって核様体は性染色体であり、プラスミドは薬剤感受性染色体。プラスミドは細菌が生きていくために必ずしも必要なDNAではないので、これをもたない細菌もいます。

一方、プラスミドをもつ黄色ブドウ球菌はメチシリンなどのペニシリン系薬剤に対し徐々にプラスミドDNAを変異させることで耐性を獲得していることが深刻な問題になっています(=MRSA=メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)。

ミトコンドリア

これはいわずと知れたエネルギーの産生の場ですね。TCAサイクルを介したATP産生という役割です。

小胞体

小胞体は粗面小胞体滑面小胞体の2つがあります。

粗面小胞体にはリボソームが付着していてDNA構成に携わってます。

滑面小胞体には何も付着はしてないですが、シトクロムP450が存在している場所、そしてCaの貯蔵庫として有名ですね。脂質の合成にも関与しています。

ゴルジ体

ゴルジ装置とも呼ばれます。糖の付加をしてくれる場所です。

リボソームによって作られたタンパク質に糖を付加し糖タンパク質を作ります。

リソソーム

加水分解酵素である、ヌクレアーゼ、リパーゼらを含みます。

膵リパーゼは脂肪を分解してくれる酵素、プロテアーゼはタンパク質を分解してくれる酵素、DNaseはDNAを分解してくれる酵素、リゾチームはペプチドグリカンを分解してくれる酵素、ミエロペルオキシダーゼは過酸化水素と反応して次亜塩素酸となり、殺菌効果を示します。

リソソーム内は酸性環境(pH約4.5~5.0)でありリソソームのpHや機能を変化させることで、免疫応答に影響を与え、自己免疫疾患の治療につながる可能性があります。ヒドロキシクロロキンはこの酸性環境を中和し、リソソームのpHを上昇させることが知られています。

ペルオキシソーム

過酸化水素を産生する酵素である、尿酸オキシダーゼ、過酸化水素を分解する酵素である、カタラーゼ、ペルオキシダーゼが存在する場所です。

過酸化水素の体内での役割は、上記の殺菌以外にも悪い作用として、ヒドロキシラジカルを生成させてしまうというのがあります。

これは、遊離脂肪酸からペルオキシラジカルを生成させ、細胞を傷つけてしまいます。ペルオキシラジカルに水素ラジカルを供与し細胞が傷つくのを防ぐ作用を持つのが、ビタミンE(トコフェロール)です。

そして、過酸化水素が酸化されてヒドロキシラジカルになるのを防ぐ作用を持つのが、 ビタミンC(アスコルビン酸)というわけです(たぶん・・)。

微小管

チューブリンが連なったフィラメントです。

細胞分裂のときの紡錘糸の形成、輸送に関与します。

葉緑体

植物、真菌のみがもつ器官です。クロロフィルにより捕捉された光エネルギーからATPとNADPHを産生します。

細胞膜

真核生物、原核生物共通に存在する構造です。脂質二重層(リン脂質×2)を形成し、その内部にタンパク質(チャネル、受容体、ポンプetc...)やコレステロールorエルゴステロールを含みます。 コレステロールは膜の流動性を低下させ硬くする作用があります。

リン脂質とは、脂肪酸、グリセロール、リン酸、塩基から成る親油性、親水性を兼ね備えた構造です。

たとえば、以下のようなものです。

  • ホスファチジルコリン(レシチン)=脂肪酸×2+グリセロール+リン酸+コリン
  • ホスファチジルイノシトール=脂肪酸×2+グリセロール+リン酸+イノシトール
  • ホスファチジルグリセロール(カルジオリピン)=脂肪酸×4+グリセロール×3+リン酸×2
  • スフィンゴミエリン=セラミド(スフィンゴシン+脂肪酸)+リン酸+コリン

脂肪酸2つのうち1つは主にアラキドン酸で、これがアラキドン酸カスケードの大本になるのです。

カルジオリピンはミトコンドリア内膜の成分ですので、細胞膜というとすこしちがうかもしれません・・・。

細胞壁

細胞壁は人には存在しないけれど、植物、真菌、細菌には存在する器官です。

人に存在しないから細胞壁合成阻害剤のような抗生物質が細菌に対してのみ殺菌作用を示すのです。

上の構造はグラム陽性菌のペプチドグリカンの構造で、グラム陽性菌の場合はこのペプチドグリカンが30~70%を占め、その他は糖、蛋白、脂質で構成されます。

次にグラム陰性菌のペプチドグリカンの構造についてみて見ましょう。

グラム陽性菌が約60%ペプチドグリカンが占めるのに対して、グラム陰性菌のペプチドグリカンは薄く、その周りをさらに脂質二重層を有する外膜で覆われています。

外膜は【リン脂質、リポ多糖(LPS)、タンパク質】らで構成され、リポ多糖は【リピドA、コア、O-側鎖】で構成されます。

リピドAは内毒素とも呼ばれ、発熱作用、ショック作用を有し、菌体が死んでも死菌として遊離します。

これが不活化(死菌)ワクチンと呼ばれインフルエンザ、日本脳炎らの予防接種に使われます。

O-側鎖は菌体の抗原性を決める部分です。O-抗原が157ならO-157になります。

おまけとして、グラム陰性菌が分泌する毒素を外毒素とよび、これの毒性をなくしたものがトキソイドといって破傷風、ジフテリアの予防接種に使われます。



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