腸内フローラ

生後すぐの腸管は無菌状態であるが、成長するにつれて数々の腸管常在菌と言われる菌達により腸内細菌叢(腸内フローラ)が形成される。

2歳位までには成人の腸内フローラに近づき、最優勢菌としてBacteroidaceae(無毒株)、Eubacterium、Peptococcaceae、Bifidobacterium(ビフィズス菌)、Enterococcus(腸球菌=Streptococcus faecalis)、 などの偏性嫌気性菌、
中程度の菌としてEscherichia coli(大腸菌・無毒株)、Streptococcus thermophilus(レンサ球菌)、Lactobacillus(乳酸桿菌) 、Veillonella(ベイヨネラ)、
少数の病原性菌としてClostridium perfringens(ウェルシュ菌)、Escherichia coli(大腸菌・無毒株)、Enterobacteriaceae(大腸菌属)、 Staphylococcus(黄色ブドウ球菌)、Proteus(プロテウス)などで構成される。

このうちE.coli、Streptococcus、Enterobacteriaceae、Staphylococcusは通性嫌気性の菌たちであり、ここでは好気性菌群に大別する(他は嫌気性菌群)。

細菌には、“酸素を必要とするもの”と“酸素を必要としないもの”がいる。これは裏を返せば、“酸素がなければ増殖できないもの”と “酸素があると増殖できないもの”があると言える。で、これらを分類してみると、

1、偏性好気性菌・・増殖に酸素が必要(緑膿菌)
2、偏性嫌気性菌・・酸素があっては増殖できない、発酵で増殖(大腸菌)
3、通性嫌気性菌・・酸素があれば好気的、なければ発酵(破傷風菌)

となる。ただし、ここで言う酸素とは空気中のものではなく遊離酸素(NO2、CO2のような化合物の中に含まれているもの)である。

嫌気性菌群はTCA回路に入らず発酵(ピルビン酸→(LDH、NADH還元)→乳酸)らによりエネルギーを得る。この乳酸がウェルシュ菌などの病原性菌が糖類を分解したときに でるアンモニア、硫化水素などのアミン物質を中和させて取り除いてくれる。

嫌気性菌が行う発酵には上記のように、ビルビン酸から乳酸を合成する過程で1molグルコース→2molのATPを得るEMP経路(解糖)以外にも、 ペントースリン酸経路(ペントースとNADPH、リボース5リン酸生成)、ホスホケトラーゼ経路(1molグルコース→1molのATP)、エントナー・ドゥドロフ経路(1molグルコース→2molピルビン酸→1molATP) の計4つの経路がある。

ところが、風邪などの病気により宿主の免疫が弱まって病原性菌が活性化してくると日和見感染を起こす危険性がある。また、抗生物質の服用による腸内フローラの乱れ もこれを助長して、アレルギー体質の人は特に病原菌に対するIgEが誘導されて下痢症状を招く。

壮年期をすぎて老年期に入ると,腸内フローラに変化があらわれはじめる。総菌数が減少し、今まで最優勢菌だったBifidobacterium(ビフィズス菌)は減少し、 Lactobacillus(乳酸桿菌)、Streptococcus faecalisといった今まで中程度の菌であった群がビフィズス菌らに置き換わって最優勢菌を構成する。

また、Enterobacteriaceae、Staphylococcusなどの好気性菌群やClostridiumなどの病原菌の比率も増加する。

Clostridium属は病原菌とはいえ、ビタミンB2産生に関わるなど、生体にとってマイナスの作用ばかりではない。


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