アレルギー性鼻炎(花粉症含む)の機序

花粉症の場合は花粉が、アレルギー性鼻炎の場合は主としてハウスダストやダニなどが、アレルゲン物質として鼻腔や副鼻腔に接触すると、最終的にIgE抗体が産生されて、それが肥満細胞からのアレルギー物質(ヒスタミンやロコトリエン等のケミカルメディエーター)の放出を促進するために、

  • くしゃみ
  • 水性鼻漏(さらさらした水のような鼻水が出ること)
  • 鼻閉(鼻づまり)

の3大症状が引き起こされます。

IgEが産生されて数々のアレルギー物質が放出されるアレルギーのことをⅠ型アレルギーと呼びます。

実際の免疫機構の流れについては、免疫機構のメカニズムを参照。

花粉症の原因となる草木とその飛散時期

種類 飛散時期
ハンノキ 1月~6月(ピークは3~4月)
スギ 10月~翌年5月(ピークは2月~4月)
ヒノキ 1月~6月(ピークは3月~5月)
シラカンバ 4月~6月(ピークは5月)
イネ科 通年(ピークは5~6月、8~10月)
ブタクサ 8月~10月(ピークは8月~9月)
ヨモギ 8月~11月(ピークは9月)
カナムグラ 8月~11月(ピークは9月)

アレルギー性鼻炎(花粉症含む)の診断

アレルギー性であるかの検査(鼻汁好酸球)と、アレルゲンの検査(皮膚テスト、血清特異的IgE抗体、誘発検査)にて陽性が出た場合に診断される。

  • 幼児では症状を訴えず、鼻閉が扁桃肥大や慢性副鼻腔炎によることも多い。
  • 花粉症では季節外には鼻粘膜も正常で、鼻汁好酸球陰性
  • 有症者で鼻汁好酸球検査、皮膚テスト(または血清特異的IgE抗体)、誘発テストのうち2つ以上陽性ならばアレルギー性鼻炎と確診できる
  • 上記3テストのうち1つのみ陽性であっても典型的症状を示し、アレルギー検査が中等度以上陽性ならばアレルギー性鼻炎としてよい。しかし好酸球のみ陽性の時は他の鼻炎との鑑別に慎重でなければならない。

アレルギー性鼻炎(花粉症含む)の治療

アレルゲンの除去

  • 室内の掃除には排気循環式の掃除機を用いる。1回20秒/m2の時間をかけ、週に2回以上掃除する。
  • 敷物のソファ、カーペット、畳はできるだけやめる。
  • ベッドのマット、ふとん、枕にダニを通さないカバーをかける。
  • 部屋の湿度を50%、室温を20~25℃に保つよう努力する。

薬物治療(花粉症の一般用医薬品)

薬物治療(花粉症の医療用医薬品)

α1刺激薬の種類と特徴

薬剤名 成分名
プリビナ液 ナファゾリン
コールタイジン点鼻液 テトラヒドロゾリン+プレドニゾロン
トラマゾリン点鼻液 トラマゾリン

鼻粘膜に存在するα1受容体を刺激して血管を収縮し、うっ血を抑制して鼻閉症状を改善する。

本薬剤により鼻粘膜血管が収縮し、鼻閉は一時的に改善されますが、連用すると神経終末のノルエピネルフリンが枯渇していくため、効果の持続は短くなり、使用後反跳的に血管が拡張し、かえって腫脹が増悪するようになります。(タキフィラキシー)

そのため、1日1回を限度として使用する。

ステロイドの点鼻液と併用する場合は、先にこれらのα刺激薬を使用して鼻腔を広げた後に使用すると効果的。

コンタクトレンズ使用者への点眼薬使用について

これについては、下記のサイトが非常にわかりやすい。

コンタクト装着時の点眼可否

まとめると、

  • 点眼薬の防腐剤の成分には、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンが含まれていて、緑膿菌を初めとした菌類への殺菌効果は、塩化ベンザルコニウム>クロロブタノール>パラベンの順
  • クロロブタノールやパラベンは比較的毒性が低いが、ベンザルコニウム塩化物塩は、高濃度では角質のたんぱく質を変性させ、角膜や結膜の上皮剥離、欠損を起こさせるといわれる
  • ソフトコンタクトレンズは薬物を吸着しやすい性質があるため、防腐剤の成分を吸着し角膜障害を引き起こす確率が上昇する
  • OTC 薬において防腐剤がCL に吸着しないよう、「ポリソルベート80」が添加されている。ちなみに、ポリソルベート80が入った花粉症関連の点眼薬は、リボスチン、リザベン、ゼペリンの3種のみ。
  • 添付文書上にソフトコンタクトレンズを外すように指示があるのは、ザジテン、リボスチン、パタノールの三種。リボスチンとパタノールは含水用のソフトコンタクトレンズのみ不可の記述。ザジテンは15分後、パタノール10分後という時間の記述あり。
  • ソフトコンタクトレンズでも非含水性もしくは、ワンデーのものであれば蓄積性が少ないためハードと同じように扱うことができる
  • コンタクトの再装着までの時間は、水溶性点眼液は5分、懸濁性点眼液は10分、ゲル基剤点眼液は30分から1時間が適切と考えられるが、ベンザルコニウム塩化物塩が添加されている場合は15分以上たってから再装着することが望ましい
  • 点眼は目の洗浄目的でもない限り、1回1滴で十分。点眼液の1適量は30~50μL、それに対して、結膜嚢の最大保持能力は約30μL、涙液量は約7μL。

点眼薬をさす順序

  • 防腐剤のベンザルコニウム塩化物配合のものとパラベンやクロロブタノール配合のものを同時に使用すると、配合変化を起こす可能性があるため、5分以上の間隔をあけて点眼する。
  • 粘性・油性点眼液のように結膜嚢内に長く滞留する場合は、5分よりも少し長く間隔をあけることが望ましい
  • 最初に点眼した薬のほうが結膜嚢からの排出が大きいので、主剤と考えられるものを後に点眼する。(例:ヒアレインとクラビットならクラビットが後)
  • 涙のpHが7.0~7.4なので、これに近い中性のものから先に使用する。そのほうが低刺激で流涙が少なく、眼内移行の効率が高まる。
  • フルメトロンはよく振って懸濁させた後に使用するが、このように水に溶けにくく吸収されにくいものは後に点眼する。
  • カリーユニ点眼(白内障)は懸濁粒子が涙液により10秒以内に溶解するので、涙液のpHが変動していない最初の点眼が望ましい。
  • フルメトロン(pH6.8~7.8、振り混ぜると懸濁性)、リボスチン(pH6.0~8.0、振り混ぜると懸濁性)、パタノール(pH7.0、水性)、ザジテン(pH4.8~5.8、水性)、アイビナール(pH5.0~7.0、水性)なら、パタノール→アイビナール→ザジテン→リボスチン→フルメトロンの順
  • 眼軟膏は水性点眼液をはじくので最後に塗布する。
  • 点眼後にゲル化する主として緑内障点眼液(チモプトールXE、リズモンTGなど)は、目の表面にしばらくとどまることで作用が持続する薬で、他の点眼液の吸収を妨げる恐れがあるため、後に点眼する。
  • 臨床試験で効果が高いことがわかっている場合その順序で行う。
    (例:緑内障治療薬の点眼順序は、副交感神経作動薬→交感神経αβ刺激薬→β受容体遮断薬の順がよい)(副交感神経作動薬は投与回数が多く、交感神経刺激薬を受容体に入りは酸くするためβを後にする)
重症度 軽症 中等度 重症
病型   くしゃみ・鼻漏型 鼻閉型 くしゃみ・鼻漏型 鼻閉型
治療
1.第2世代抗ヒスタミン薬
2.遊離抑制薬
1.第2世代抗ヒスタミン薬
2.遊離抑制薬
3.局所ステロイド薬
1.ロイコトリエン拮抗薬
2.トロンボキサン拮抗薬
3.局所ステロイド薬
局所ステロイド薬 + 第2世代抗ヒスタミン薬 局所ステロイド薬 + ロイコトリエン拮抗薬 またはトロンボキサン拮抗薬
1. 2. のいずれか薬 1.2.3.のいずれか 必要に応じて1.に2.または3.を併用する   必要に応じて点鼻用血管収縮薬を治療開始の5~7日間に限って用いる。
  鼻閉型で鼻腔形成異常を伴う症例では手術
  特異的免疫療法
アレルゲン除去・回避

減感作療法

減感作療法は、除去が可能なアレルゲン(食物、ペット、ソバガラ枕など)についてはふつうは行いません。皮下注射で行います。治療期間は少なくとも2~3年をみなければなりません。中止しても効果は数年以上持続する例が多いといわれています。

機序は口腔粘膜下の樹状細胞によるアレルゲンの捕捉が起こり、Th2細胞の増加抑制及びTh1細胞の増加、制御性T細胞の誘導などの免疫反応が引き起こされ、アレルギー症状の発現が抑制されると考えられている。

特異的免疫療法の特徴

  • 長期寛解や治癒が期待できる
  • 効果発現が遅い。
  • 長期の定期的注射が必要である。
  • 稀ながら重篤な副作用(全身性アナフィラキシーショック)を起こす。
  • アレルゲンの検索が必須である。

減感作療法の医薬品

  • シダトレンスギ花粉舌下液(標準化スギ花粉エキス)

12歳以上。投与開始後2週間、以下の用量を1日1回、舌下に滴下し、2分間保持したあと飲み込む。その後5分間は、うがい・飲食を控える。3週目以降は維持期として2000JAU/mlパックの全量1mlを1日1回同様の操作を2~3年間継続する。製剤上の理由から2000JAU/mlを超える高濃度製剤を製造することが困難だったため、この量が維持量となった。

処方医が講習受講や登録が必要であるため、患者は登録されている医者を調べた上で受診を受ける必要がある。また、治療時期が花粉が飛散されていない時期とされているため、花粉飛散開始日から3ヶ月以上前(11月頃)までに始めることが望ましい。

大体全体の8割~9割に効果があるとされる。副作用は軽いアレルギー反応(口腔内のかゆみ)が最も多く、アナフィラキシー等の重大な副作用の頻度は極めて低い。

金額は医療機関と薬局を合わせると、3割負担で約3000~4000円/月ほど。

1週目 2週目
シダトレンスギ花粉舌下液200JAU/mlボトル > シダトレンスギ花粉舌下液2000JAU/mlボトル
1日目 0.2ml 1日目 0.2ml
2日目 0.2ml 2日目 0.2ml
3日目 0.4ml 3日目 0.4ml
4日目 0.4ml 4日目 0.4ml
5日目 0.6ml 5日目 0.6ml
6日目 0.8ml 6日目 0.8ml
7日目 1ml 7日目 1ml

服用後のは激しい運動を控える必要がある。そのため12歳以上であれば問題ないが、シダキュアのように年齢制限がない場合の服用には十分注意する。

  • シダキュア舌下錠・・・シダトレンより高力価で、舌下錠。比較表は以下。薬価はシダトレン2000JAUとシダキュア5000JAUで10円ちょっとの差。力価が2倍以上あるのでシダトレンの2年の効果が、シダキュア1年の効果と同じではないかとされている。
シダトレン シダキュア
適用年齢 12歳以上 制限なし(5歳以上)
剤形 液剤 錠剤
保管温度 冷所(2-8度) 室温
用法・用量 1日1回、舌下に滴下。2分保持後飲み込み、5分はうがい・飲食控える。他上記。 1日1回、舌下で溶解、1分保持後飲み込み、5分はうがい・飲食控える。投与1週目は2000JAU、2週目以降は5000JAU
  • ミティキュアダニ舌下錠・・・ダニアレルゲンを含む舌下錠。シダトレンと同じく、講習終了医療機関のみで処方される。登録医師確認窓口はシダトレンと同じ(シダトレン/ミティキュア登録医師確認窓口:0120-893-146)

手術

手術療法の第1の目的は鼻閉の改善です。保存療法で改善せず、血管収縮性点鼻薬に反応の悪い人が適応となります。

  • 鼻粘膜の縮小と変調を目的にした手術:電気凝固法、凍結手術、レーザー手術法、トリクロール酢酸塗布
  • 鼻腔通気度の改善を目的とした鼻腔整復術:粘膜下下鼻甲介骨切除術、下鼻甲介粘膜切除術、鼻中隔矯正術、高橋式鼻内整形術、下鼻甲介粘膜広範切除術、鼻茸切除術
  • 鼻漏の改善を目的とした手術:vidian神経切除術

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