ステロイドの構造と作用機序
副腎の構造
副腎皮質ホルモン(広義でステロイド)はその名のとおり、副腎皮質から分泌されるホルモンです。
副腎というのは腎臓の上にある小さな臓器で、主にホルモンの分泌に関与しています。
上は副腎の図です。副腎は皮質のほうが厚い構造を持っています。簡単に言えば、皮の方が厚く、実が少ないみかんのような感じです。
副腎皮質ホルモンは、このみかんの皮の部分から分泌されるホルモンです。
副腎皮質といえど3層に分かれているということは上の図を見てもらえればわかると思います。
球状層では鉱質コルチコイドが、束状層では糖質コルチコイドが、網状層ではアンドロゲン(男性ホルモン)が合成されます。
脳下垂体から分泌されるACTHにより分泌が促進され、ACTHの分泌は視床下部から分泌されるCRHにより調節されています。
ステロイドホルモンの産生・分泌は強力なフィードバック機構により調節されており、血中の糖質コルチコイド濃度の上昇はACTHの分泌を抑制します。
ただ、ステロイドホルモンの分泌には日内リズムというものが存在し、深夜から朝にかけて多く、それ以降は徐々に下がり夕方ごろ最低となるという一定のリズムがあります。
フィードバック機構は分泌が多い深夜から朝にかけて起こるので、このとき血中のステロイドホルモン濃度が高いと、脳が「もうホルモンを分泌する必要はない」と判断し、CRHによる通常のホルモン分泌を妨げることになるので、副腎皮質の萎縮が起こってきます。
このため、ステロイドホルモンの外用、内服はフィードバックが外れた朝にあわせると、自分の副腎への負担が少ないといわれています。
副腎皮質ホルモンの合成と作用点
別名コルチゾールと呼ばれ、一般にステロイドといったらこのコルチゾールをさすことが多いです。 ステロイドはその名の通り、コレステロールから合成されます。
ステロイドは、細胞膜を通過し、細胞質内受容体であるグルココチルチコイドレセプター(GR)へ結合した後、温度依存性の変形を受けて核膜を通過し、核内でGRE(glucocorticoid responsive element)と結合し、リポコルチンなどの調節タンパクを合成する。
GRは細胞内に存在するリガンド依存性に活性化される転写調節因子であり、GRα、GRβの2型が存在する。
細胞質内に存在するGRαはステロイドの作用発現にかかわるが、GRβは核内に存在し、ステロイドと結合しないとされる。
GRは細胞質内で、通常はHSP90という熱ショックタンパク質と複合体を形成し、不活性な状態で存在していますが、細胞内に入ってきたステロイドと結合すると、HSP90と解離し、活性化してステロイド-GR複合体同士でホモ二量体を形成、核内へ移行し、遺伝子プロモーターやエンハンサー上の応答配列GREに結合して転写活性を促進して種々の活性蛋白が誘導される。
また、ステロイドとGRの複合体が抑制的に働く場合もある。
CRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)遺伝子の発現やACTH(副腎皮質放出ホルモン)の前駆物質であるpro-opiomelanocortin遺伝子の発現は、複合体がnGRE(negative GRE)と呼ばれる応答配列に結合することで、調節されている(負のフィードバック制御機構が働くようになることによる)。
さらに、ステロイドとGRとの複合体はAP-1(c-Junのホモ二量体あるいはc-Fosとのヘテロ二量体)やNF-κBと相互作用することでこれらの遺伝子転写を抑制する。
最近騒がれている環境ホルモンと呼ばれるダイオキシンなどの性ホルモン様作用を示す環境汚染物質の作用機序は以下のようなものである(AhR:ダイオキシン受容体と呼ばれ、数多くの脂溶性薬物をリガンドとする。)。
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