咳の発生メカニズム
咳受容体は、気管支の上皮間や上皮下などの気道壁表層に分布する知覚神経終末に存在し、異物による咳受容体の刺激はAδ線維かC線維により迷走神経求心路を介して延髄弧束核の咳中枢に伝達される。
気道に炎症が起こるとC線維の受容体が刺激され、C線維からの軸索反射によってSPが放出され、これが近傍に存在するAδ線維の咳受容体感受性を亢進させて、咳中枢が刺激される。
また、強い気管支壁の炎症により、NOが産生され、温度感受性TRPチャネルであるTRPV1(バニロイド1受容体)やTRPAなどの神経上の受容体が刺激、C線維を介して咳中枢が刺激されることもある。
一般的には、Aδ繊維は機械的な刺激(繰り返す気道の収縮や痰などの刺激)を受けて咳を出すので、長時間作用性の気管支拡張薬が著効する。(喘息、咳喘息)
C繊維は受容体を介した刺激(熱や酸、カプサイシン等の刺激)を受けて咳を出すので、咳感受性を低下させる作用を有する抗コリン薬が効く。(感染後咳嗽=コロナなど)
微生物による気道上皮障害の方法は、インフルエンザやRSウイルス等のウイルス群は気道上皮に侵入し、上皮細胞の破壊を起こす。マイコプラズマは気道上皮細胞の線毛に付着し、過酸化水素を発生させて気道上皮を破壊する。肺炎クラミジアはエネルギー寄与体のために気道上皮に侵入し増殖時に気道上皮を破壊する。百日咳菌は百日咳毒素の作用で線毛運動を傷害したり、気道上皮の破壊を起こす。気道上皮の破壊が起こると、粘膜下のC線維の一部が露出するため、外気吸入の僅かな刺激によりC線維末端からSPなどが放出されて咳嗽が発生する。
胃食道逆流症(GARD)では、食道下部の知覚神経が胃酸で刺激→迷走神経反射を介して気道壁表面の咳受容体の感受性を亢進させる。
ただし、咳の受容体である迷走神経知覚受容体は下気道以外にも広範に存在することに注意する。
関連ページ
コメントor補足情報orご指摘あればをお願いします。
- << 前のページ
- 次のページ >>