ビグアナイド剤

ビグアナイド剤の作用機序

  1. 肝臓における糖新生抑制作用
    肝臓においてAMPキナーゼを活性化して糖新生に関わる酵素の発現を抑制することで、肝ブドウ糖放出を抑制する。主として乳酸からの糖新生を抑制する。
  2. 肝臓における脂肪酸酸化酵素促進・脂肪酸合成抑制(β酸化)
    AMPキナーゼの活性化によりAMPキナーゼがアセチルCoAからマロニルCoAへの転換を触媒させ、脂肪合成に必須の酵素であるアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)をリン酸化することにより、ACCの活性を低下させ脂肪合成を低下させる。
    また、マロニルCoAの産生が低下すると、脂肪酸酸化に関わるカルニチンパルモトイルトランスフェラーゼ1の活性が増強して脂肪の酸化が促進する。

    糖新生を回すエネルギーが脂肪酸のβ酸化から調達されていることから、糖新生を抑制するとβ酸化が抑制され、体重増加が起こる。 そのため、インスリン分泌を促進し糖新生を抑制するSU剤やグリニド剤は体重が増加する(チアゾリジンは浮腫による体重増加)と言われる反面、ビグアナイドは体重増加は起こらない。
  3. 骨格筋におけるグルコースの取り込み促進作用
    AMPキナーゼは骨格筋において糖輸送担体(GLUT4)の細胞膜上への移行を促進、あるいはGLUT4の発現を促進することなどにより、筋肉内のブドウ糖取り込みを増加させると考えられている。
  4. 食欲抑制、体重減少作用
    グレリンやGLP-1などの食欲調節作用のある消化管ホルモンに影響を及ぼすとの報告がある。
  5. 腸管への直接作用
    小腸L細胞に直接作用してGLP-1を放出させる。(胆汁酸に対する作用。胆汁酸がGLP-1を分泌する)
    門脈、静脈内投与に比べ、十二指腸内投与は血糖値をより低下。(メトホルミン血中吸収前に十二指腸に直接作用し、肝糖放出を抑制)
    腸内細菌への作用:エンドトキシンLPSは、腸管から血中及び肝臓へ行こうし、インスリン抵抗性を惹起するが、メトホルミンはLPSを低下させ、血中、肝でインスリン抵抗性を改善する。

(調剤と情報より一部改変)

ビグアナイド剤の種類

  • メトグルコ(メトホルミン)・・・通常、成人には1日500mgより開始し、1日2~3回に分割して食直前又は食後に経口投与する。維持量は効果を観察しながら決めるが、通常1日750~1,500mgとする。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日最高投与量は2,250mgまでとする。
  • ジベトンS(ブホルミン)
  • 配合剤(メタクト、エクメット、イニシンク)・・・エクメットはメトホルミン250mg分2、メタクトとイニシンクはメトホルミン500mg分1。250mg朝夕でも500mg朝でも24時間平均血糖、SD、HbA1c、尿中アルブミン、BWの有意な上昇はない(低下例すらある)。メトホルミンは血中半減期と作用j感が完全に同じではない可能性が考えられ、血中メトホルミンを介さない消化管での直接作用の寄与も示唆される。

昔は全ての腎機能障害患者において使用できなかったが、2016年から軽度の腎機能障害患者に対しては慎重投与できるようになった(以前として中等度以上の腎機能障害患者には禁忌)。

Recommendationによれば、eGFRが30未満が禁忌、30~45の場合は慎重投与、45~60でも腎血流量を低下させる薬剤(ARB、ACE、利尿薬、NSAIDs等)の併用で腎機能が悪化する場合があるので注意することとでている。

乳酸アシドーシス

ビグアナイド系薬剤は、主に肝ミトコンドリアの細胞膜に結合して酸化的リン酸化を阻害し、乳酸からの糖新生を抑制することにより血糖を下げるため、乳酸産生が増加する。通常はそれに応じて乳酸の代謝が増加し、乳酸値のバランスは保たれるが、肝での代謝能以上に乳酸が増加した場合や、肝での乳酸の代謝能が低下している場合にはこのバランスが崩れ、血液のpHが酸性側(7.10未満)に傾き、乳酸アシドーシスが発現する。

乳酸アシドーシスの初期症状は、悪心、嘔吐、腹痛、下痢などの胃腸症状、倦怠感、筋肉痛、アセトン臭を伴わない過呼吸が特徴的で、いったん発症すると急激に全身状態が悪化し、死に至ることもある重大な副作用なため、服用中に倦怠感、意識障害などの症状が出現していないか注意する。

乳酸アシドーシスが疑われる場合は、直ちにビグアナイド系薬剤の投与を中止し、血液透析による乳酸とビグアナイド系薬剤の除去、輸液による強制利尿(乳酸を含む輸液は使用不可)、炭酸水素ナトリウム静注等によるアシドーシスの補正(過剰投与によるアルカローシスに注意)等の適切な処置を行う。

ビグアナイド剤の副作用として乳酸アシドーシスが挙げられているが、まれであり、

  • 腎機能障害患者(透析患者を含む)
  • 脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取など、患者への注意・指導が必要な状態
  • 心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者
  • 高齢者

などのハイリスク患者への使用に注意して、適用を誤らない限り危険はほとんどないとされる。 (参考文献・引用元:武田Webセミナー2017.11.6)

糖尿病の薬の種類


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