マイコバクテリウム属(Mycobacterium)全般

  • 別名:抗酸菌(抗酸性を持ち、酸やアルコールによる脱色に耐える能力があるため)
  • 細胞壁に特有の脂質(ミコール酸)を含んでいることと、細胞内寄生菌であることによりβラクタム系とは異なる抗結核薬を使用する必要がある。
  • グラム陽性好気性菌ですが、通常のグラム染色法では染色されにくい特徴があります。チール・ネルセン染色→陽性(=ガフキー陽性)→赤色脂質
  • 抗酸菌を細胞内に隔離しようとする生体内反応ゆえに肉芽腫が形成され、慢性的な炎症が起こる。

結核菌(M.tuberculosis)

  • 2類感染症
  • 結核は主に飛沫感染ではなく空気感染するので他の細菌よりも広がりやすいです。感染した人が咳やくしゃみをすることで放出された細菌を含む飛沫核が他人に吸い込まれることで感染します。
    発症パターンが大きく2パターンある。
    • 一次結核症・・・感染から半年から2年で発症する。免疫が低下した人や乳児に多い。血痰、体重減少、倦怠感、乾略性肉芽腫、レントゲンで下肺野が白く
    • 二次結核症・・・感染した時は発症せず、後で免疫が低下した時やステロイドを使用した時(数年後)に発症する。症状は一次と同じ。レントゲンで上肺野が白く
  • 上のように菌の発育が遅い(世代時間約20時間、大腸菌=30分)ので、多くは潜伏感染(無症候性感染)の状態になります。
  • 活動性結核病は主に肺結核として現れますが、骨、脳、腎臓、リンパ節など他の臓器にも影響を及ぼすことがあります。
  • 弛張熱(日内の体温差が1℃以上のこと。夕方や夜に発熱が高くなる)が見られることがある。しかし、すべての結核患者が弛張熱を経験するわけではありません。
  • 肺結核を疑った場合、まず胸部単純X線写真を撮影し、陰影が合った場合、喀痰が採取可能であれば喀痰の検査を行う。結核はレントゲンで多くはわかるが、肺の入り口はレントゲンは一見正常、CTとかでないとわからない。
  • 抗生剤の感受性を調べるためには、細菌培養を行う(小川培地だと1-2か月かかるが、MGITを使えば2週間)
  • 3連痰と呼ばれる、3日連続で喀痰検査(チール・ネールセン染色)陰性、PCR陰性なら治療終了

結核の治療

標準治療は、

  • イスコチン(イソニアジド)
  • リファジン(リファンピシン)
  • ピラマイド(ピラジナミド)

の3剤で、耐性がある可能性がある場合に

  • エブトール(エタンブトール)orストレプトマイシン(ストレプトマイシン)

が追加される。

よって、結核の薬物治療は、3剤もしくは4剤を2か月間投与した後、リファンピシンとイソニアジドの2剤だけ継続でさらに4か月間投与し、合計6ヵ月行う

イソニアジド耐性菌にはニューキノロンを投与。末梢神経障害が起きることがあるので必要に応じてビタミンB6(ピリドキサール)を併用する。

イソニアジドはヒスチジンやチラミンを含む食品(ワイン、魚、チーズ等)を摂りすぎると、食品の成分の一部の解毒代謝が影響を受けて、食品の成分による副作用(顔の赤み、発疹、血圧上昇等)が起こることがある。

ピラジナミドは多剤併用とすることで静菌⇒殺菌作用を示し、他結核薬の作用を増強する。尿酸値の上昇に注意する。

リファンピシンは血小板の低下に注意。

エタンブトールは視力障害(赤緑識別困難)のSEがあるので視力検査必須。

ストレプトマイシンは聴力障害に注意。

結核の予防

乳児はワクチン、大人はマスクと隔離。

BCG(ワクチン)はスタンプ型の生ワクチンで、生後1歳まで(通常生後5~8か月)に接種します。BCGは生きているが弱毒化された(減毒化された)Myobacterium bovis(牛結核菌)から作られています。

ツベルクリン反応は結核菌に特有のタンパク質抽出物を皮膚に注射し、体の免疫応答を観察した時に、腫れていれば陽性、腫れが小さいなら陰性とする反応のこと。

以前は小学一年と中学一年の時、陰性ならBCGの再接種が行われていたが、平成15年4月1日以降は廃止された。

陽性なら結核の可能性があるわけだが、ツベルクリン反応は結核菌だけでなく非定型抗酸菌でも反応するので、今は結核菌だけの反応を見ることができるIGRA(Interferon-Gamma Release Assays)を使って、体のT細胞が放出するインターフェロンガンマ(IFN-γ)の放出量を測定して感染の有無を調べます。

ハンセン病菌(M.leprae)

  • ハンセン病(別名:らい病)の原因となる細菌
  • 非常に耐性が強く、成長速度が遅いです。このため、培養や実験室での研究が難しいとされています。PCRで診断する。
  • ハンセン病は主に長期間の密接な接触を通じて人から人へと伝播します。しかし、感染しやすい病気ではなく、大多数の人々は自然に抵抗力を持っています。
  • 初期症状としては、皮膚の変色や感覚の喪失が挙げられます。進行すると、神経損傷による感覚喪失や筋力の低下が起こり、重度の場合は手足の変形に至ります。

非定型抗酸菌(Atypical Mycobacteria)=非結核性抗酸菌(Non-tuberculous Mycobacteria、NTM)

  • 結核菌やハンセン病菌以外のマイコバクテリウム族に属する菌の総称。非定型抗酸菌には多くの種類が存在し、それぞれ異なる特性を持っています。代表的なものには、
    • Mycobacterium avium complex (MAC)
    • Mycobacterium kansasii
    • Mycobacterium marinum
    などがあります。性状は結核菌に類似しているが、発育(増殖)が早いです。
  • これらの細菌は自然界に広く分布しており、特に水や土壌、家庭の水道設備などに見られます。結核とは違って飛沫感染では感染しません。
  • 通常、健康な人では感染リスクが低い(結核より弱い)ですが、免疫系が弱っている人、特にHIV感染者や肺疾患を持つ人、あるいは最近手術を受けた人などは感染リスクが高まります。中高年の女性に多い。
  • 感染が起こると、肺疾患、リンパ節の感染、皮膚病変、そして稀に全身性の疾患を引き起こすことがあります。症状は結核と同じで血痰や微熱、肉芽腫です。
  • 診断も結核と同じですが、PCRが最も信頼できます。2連痰で治療終了。
  • 治療は抗結核薬だけでなくクラリスロマイシンも使用できる。

細菌の種類一覧

グラム陽性球菌

  • グラム陽性球菌(GPC:Gram-Positive Cocci)
    • ブドウ球菌属(Staphylococcus)
      • 黄色ブドウ球菌(S.aurens)
      • 表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)
      • 腐生ブドウ球菌(S.saprophyticus)
    • レンサ球菌属(Streptococcus)・・・腸内常在菌。ホモ
      • A群溶血性レンサ球菌(S.pyogenes)・・・溶連菌
      • B群溶血性レンサ球菌(S.agalactiae)
      • C, G群溶血性レンサ球菌(S.dysgalactiae ssp.equisimilis)
      • アンギノサス(S.anginosus)
      • コンステラータス(S.constellatus)
      • インターメディウス(S.intermedius)
      • 肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)・・・呼吸器
      • ミティス(S.mitis)
      • サングイニス(S.sangulnis)
      • サリバリアス(S.salivarius)
      • ウシレンサ球菌(S.bovis)
      • ミュータンス(S.mutans)
      • サーモフィルス菌(S.thermophilus)・・・乳酸菌
      • フェカリス菌(S.faecalis)・・・乳酸菌
    • 腸球菌属(Enterococcus)
      • フェカリス菌(E.faecalis)・・・ホモ(乳酸)
      • フェシウム菌(E.faecium)
    • ラクトコッカス属 (Lactococcus)
      • ラクトコッカス・ラクティス(L.lactis)・・・ホモ(乳酸)
    • ペディオコッカス属(Pediococcus)・・・ホモ(乳酸)
    • リューコノストック属 (Leuconostoc)・・・ヘテロ

グラム陽性桿菌

グラム陰性球菌

グラム陰性桿菌

その他

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