NASH/NAFLDとMASH/MASLD

NASH/NAFLDという用語は2023年に改定され、疾患概念は少し異なりますが、MASH/MASLDに変更されている。

そして、全体を含む包括的な枠としてSteatotic Liver Disease (SLD) が設定され、肝臓に脂肪がたまる「脂肪肝のすべての原因」を広く扱う。 脂肪肝患者の肝硬変や肝炎へのリスク評価にアルコールの有り無しだけを使うのはナンセンスであるため(nonalcohoricが実際の病態を正確に反映していない)。

MASH/MASLD

MASLDは代謝機能障害関連脂肪性肝疾患のことで、肝臓に脂肪があり、少なくとも以下の1つの代謝リスク因子を有し、飲酒量が規定の量未満である状態のこと。

  • 過体重/肥満(アジア人では BMI ≧ 23 kg/m2 または腹囲・ウエスト周囲長の基準)
  • 耐糖能異常 (空腹時血糖異常や糖尿病)、または 2型糖尿病。
  • 高血圧 (または降圧薬を使っている)
  • 高トリグリセリド (中性脂肪)、または脂質異常の治療中。
  • 低 HDL コレステロール、または脂質異常の治療中。

飲酒量が中等度の場合はMetALD(代謝機能障害アルコール関連肝疾患)、飲酒量が重度の場合はALD(アルコール関連肝疾患)と呼ばれる。

(図:調剤と情報2025.7)

NASH/NAFLD

肝炎には、B型やC型などのウイルス性肝炎や、アルコールのとりすぎによるアルコール性肝炎、そのいずれにも属さないNASH(非アルコール性脂肪肝炎)がある。

肝臓に脂肪が貯まると脂肪肝となるが、アルコールを原因とした脂肪肝ではなく、食べ過ぎや運動不足などの生活習慣病が原因で脂肪肝となってしまう、これをNAFL(非アルコール性脂肪肝)と呼び、NASHと共に、NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)に含まれる。

肝臓への中性脂肪の蓄積により、肝臓からサイトカインが分泌されて、炎症が起こり、炎症が慢性化するとNASHを引き起こし、いずれ肝硬変に進行する。炎症を起こしていなかったとしても(つまり、NAFLでも)、肝硬変へは数十年後には移行することがあるが、NASHのほうが移行しやすさが2倍程度速い。

脂肪肝が強いと、骨格筋のインスリン感受性が低く、肝臓のインスリン抵抗性が増し、NASHを加速させる。

NASHの特定マーカーはないため、確定診断には線維以下の有無を調べるために肝臓の一部を採取する肝生検、血液検査の値を使って線維化の程度を調べるFIB-4 index、超音波を用いて線維化の程度を調べるフィブロスキャン、画像で肝臓の状態を調べるMRエラストグラフィや超音波エラストグラフィが使用される。いずれも保険適用である。

治療は運動・食事療法を基本として、薬物療法にてTG、LDLを低下させる方法で間接的にNASHやNAFLを抑える。直接的に抑える薬はないが鮭に含まれるアスタキサンチンがいいとか。

(参考・引用元:クレデンシャル2017.10)

動脈硬化疾患ガイドライン2022より

  • NAFLDは高TG血症、高LDL-C血症、低HDL-C血症と関連する。
  • NAFLD患者は、sd-LDLやレムナントコレステロールが増加する。
  • NAFLD/NASH患者では、非NAFLD患者と比較し、心血管疾患の発症リスク、心血管疾患による死亡ともに高率である。

関連ページ

コメントor補足情報orご指摘あればをお願いします。

(件名or本文内でキーワード検索できます)



  • << 前のページ
  • 次のページ >>
ページトップへ