チアゾリジン薬
分類 | 成分名 | 商品名 | 規格・剤形・補足 |
---|---|---|---|
チアゾリジン系 | ピオグリタゾン | アクトス | 規格:錠15mg/30mg、OD錠15mg/30mg 適応:2型糖尿病(ただし、食事療法、運動療法のみ又は加えてSU剤・αGI・BG・インスリン投与で効果不十分な場合に限る。) |
配合剤 | ソニアス メタクト リオベル |
チアゾリジン薬の作用機序
チアゾリジン薬はPPARγ阻害剤と言い換えることが出来る。PPARγ(核内受容体型転写因子で脂肪、肝臓、血管壁などに存在して、脂肪細胞分化、脂肪酸の取り込みなどの役割を果たす。)に結合することにより、前駆脂肪細胞から大型脂肪細胞(TNF-αを分泌)の分化誘導を抑制して、インスリン感受性の高い小型脂肪細胞(アディポネクチンとPPARαを分泌)を増やす。
肥大化した脂肪細胞からはTNF-αが分泌され、骨格筋などの末梢組織における糖の取り込みを阻害する(インスリン抵抗性を高める)が、アディポネクチンは肝・骨格筋に作用してAMPキナーゼを活性化させて、肝臓では糖新生を、骨格筋では糖の取り込み(GULT4のtranslocation)を促進(インスリン感受性を高める)する。
脂肪細胞 | 生理物質 | 作用 |
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小型 | アディポネクチン | 糖尿病や高血圧、動脈硬化を防ぐ |
大型 | TNF-α | 糖尿病や動脈硬化を招く |
アンジオテンシノーゲン | 血圧を高める | |
プラスミノーゲン活性化抑制因子 | 血液を固まりやすくする | |
HBEGP | 血管壁の細胞を増やし動脈硬化を招く |
PPARαはフィブラートにて活性化される。
※AMPキナーゼ:細胞内エネルギーセンサーとして機能するセリンスレオニンキナーゼの一種で、インスリン経路と独立して糖代謝、脂質代謝に働く
チアゾリジン薬の種類
朝食時に飲み忘れた場合は昼食時に服用する。それ以降の場合は服用しない。高齢者には慎重投与。
- アクトス(ピオグリタゾン)・・・
①食事療法、運動療法のみの場合及び食事療法、運動療法に加えてスルホニルウレア剤又はα-グルコシダーゼ阻害剤若しくはビグアナイド系薬剤を使用する場合
通常、成人には15~30mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。なお、性別、年齢、症状により適宜増減するが、45mgを上限とする。
②食事療法、運動療法に加えてインスリン製剤を使用する場合
通常、成人には15mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。なお、性別、年齢、症状により適宜増減するが、30mgを上限とする。
チアゾリジン薬の副作用
浮腫
浮腫の頻度は女性で有意に高く発現する。浮腫のメカニズムは完全に解明されていないが、チアゾリジン誘導体により、腎集合管に高発現しているPPARγを活性化しNaチャネルの発現を誘導し、Na再吸収が促進し貯留することにより体内の水分量が増えて浮腫が生じると考えられている。
浮腫への対応は、トリアムテレン、スピロノラクトンの利尿剤、減塩、チアゾリジン誘導体の減量・中止などが挙げられる。
(糖尿病性)黄斑浮腫が発症または増悪したとの報告がある。視力低下があらわれた場合には黄斑浮腫の可能性を考慮すること。
体重増加
体重増加には浮腫と脂肪組織増加の二つの原因が考えられるが、機序は未だ不明である。
チアゾリジン誘導体投与により、平均1.38kgの体重増加がみられ、約3年間の投与で3~4kg増加を認める場合がある。特にSU剤に併用した場合に体重増加がみられた。
浮腫や心不全がなければ脂肪量の増加(特に皮下脂肪)や食欲亢進作用などが考えられるため、生活習慣を見直して、食事療法の徹底を図る。
心不全
浮腫と体重増加をきたす症例に心不全を合併する率が高いとされている。
定期的に心電図検査などを行い、服用中の浮腫、急激な体重増加、症状(息切れ、動悸、心胸比増大、胸水等)の変化に注意して異常がみられた場合には直ちに本剤の服用を中止し、受診するよう患者を指導する。
浮腫の対処にはループ利尿剤(フロセミド等)の投与等が行われる。
骨折
チアゾリジン系薬は動物実験で骨密度を低下させるとの結果が出ている。骨折のリスクは用量依存性である。
膀胱がん
膀胱がんの発生リスクについては、統計学的な有意差は認められないという報告と、リスク増加の可能性を示唆する報告がある。膀胱がん治療中の患者は投与を避けることとされており、その既往を有する患者には慎重に判断したうえ、十分に説明してから開始することになっている。
チアゾリジン薬の相互作用
ピオグリタゾンの代謝酵素CYP2C8誘導作用を有する薬剤(リファンピシン)との併用でピオグリタゾンのAUCが54%低下。CYP2C8阻害作用を有する薬剤(クロピドグレル、デフェラシロクス等)との栄養で効果が増量する。
糖尿病の薬の種類
- インスリン製剤
- GLP-1受容体作動薬
- SU剤(スルホニルウレア剤)
- グリニド剤(速効型インスリン分泌促進薬)
- ビグアナイド剤
- グリミン系(ツイミーグ(イメグリミン))
- チアゾリジン剤
- α-グルコシダーゼ阻害薬
- DPP4阻害薬
- SGLT2阻害薬
- 糖尿病性神経症治療薬
- 糖尿病性腎症治療薬
- 配合剤
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記事No773 題名:Re:藤吉 投稿者:管理人tera 投稿日:2018-11-15 11:21:19
仰るとおりかと思われます。
記事No770 題名:肝における糖新生への影響で 投稿者:藤吉 投稿日:2018-11-13 19:03:18
チアゾリジン薬の作用機序の2文目について質問です。
アディポネクチンがAMPキナーゼを活性化し、活性化されたAMPキナーゼは肝臓において糖新生を抑制するのではないですか?
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