てんかんとは
てんかんとは、種々の病因によって大脳神経細胞が異常に興奮することにより、発作を伴う慢性脳疾患慢性脳障害であり、大脳ニューロンの過剰反射の結果生じる通常5分以上は続かない反復性発作(てんかん発作)を主徴とする(5分以上続くのは、てんかん重積症など、特殊な場合。脳が疲れてしまうため)。
新規発症は0-1歳と高齢者で多く、年齢別の罹患率分布はUの字を描く。
発作は短時間であるが、脳機能の障害のため意識の低下、体部位の痙攣または筋緊張の低下、異常感覚を起す。
発熱や電解質異常などで一過性の脳機能障害が出現する急性反応性てんかん発作は、本来のてんかんと区別して考える。
原因は遺伝的素因が高いもの(真性てんかん)と脳疾患(脳腫瘍やアルツハイマー、外傷等)が原因で起こるもの(症候性てんかん)にわけられます。
さらに、てんかん発作が脳全体で起こるか一部のみかで全般発作と部分発作に分けることができます。
分類 | 意識(有○、減損△、無×) | 持続時間 | 年齢 |
---|---|---|---|
強直間代発作 | × | 1~1分30秒 | 成人 |
ミオクロニー発作 | ○ | 1秒以下 | 成人 |
欠神発作 | × | 10~30秒 | 小児 |
脱力発作 | × | 1~4秒 | 小児 |
単純部分発作 | ○ | 1分以内 | 成人 |
複雑部分発作 | △ | 30秒~3分 | 成人 |
全般発作
全般発作では、突然の意識障害で始まることが特徴で、以下のいくつかに分類できます。
- 欠神発作(小発作):の発作持続時間が非常に短いものの、日に何度も起こることがあるのが欠神発作です。欠神発作が起こると、一点を見つめたまま動作が停止(ボーっとして短い間動きが止まり話しかけても反応しないなど)し、周囲の動きに反応しなくなります。幼児期や思春期に発症することが多いです。
- 強直間代発作(大発作):意識が消失し強直間発作(強直期:全身が硬直=プルプル)を起した後、間代性痙攣(間代期:短い周期のけいれん=ピクピク)に移行していくものを強直間代発作といい、発作の際に舌を噛んだり、尿を漏らしたり、転倒やけいれんによってけがをすることが有ります。
- ミオクロニー発作(小型運動発作):ミオクロニー発作では、全身や四肢が突然ぴくっとけいれんし、手に持っていたものを落としてもらうことが有ります。
- 脱力発作(小型運動発作):脱力発作では、突然筋肉の緊張を失い、意識がなくなるため、床に倒れます(落下病)。発作はすぐに収まりますが、転倒による怪我が深刻な事態を招くことが有ります。成人で脱力発作のような症状が見られた場合、てんかんより先に脳幹で起きた一過性虚血発作(TIA)を疑う。
- 点頭発作:(点頭てんかん=ウエスト症候群):特定の年齢層の小児に見られるてんかんの一形態で、通常は乳幼児期に発症し、頭を前方に素早く曲げる動作を伴います。
部分発作
発作が一側大脳半球の一部から始まるものを部分発作と呼び、単純部分発作と複雑部分発作、二次性全般化に分類される。
- 単純部分発作(焦点発作):単純部分発作は意識障害はなく、てんかんが起こった脳の部位の働きに関係する部分の身体領域が影響を受ける(運動野なら体の痙攣、感覚野なら視野に光・しびれ、ブローカー野なら言語、精神症状:デジャブ、自律神経(自律神経発作):吐き気めまい等)。単純発作の中でも特に身体の一部の運動発作ではじまり全身に広がる場合はジャクソン型発作という。
- 複雑部分発作(精神運動発作):複雑部分発作は意識障害を伴う発作で、一点を見つめて動かなくなり、周囲に反応しなくなります。自動症と呼ばれる無意識は行動(手を動かす、口をモグモグなど)を取ることがある。(精神運動発作=側頭葉てんかん)とほぼ同義である。
- 二次性全般化発作:二次性全般化発作は、部分発作が二次性に全般化して、全般発作のような発作(主として強直間代発作)を引き起こすものです。
また、発作が反復したり、延長して発作間の回復がない状態をてんかん発作重積状態という。
てんかん発作重積状態では脳に後遺症が残る危険性があるため、直ちにジアゼパムの投与が必要です。他のてんかんは放っておけば比較的早めに収まるので、落ち着かせてけがをさせないなどの対処をすることが最も大切です。
全般発作 | 焦点が大脳全域にわたるもの。 | |
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強直・間代性発作 (大発作) |
大発作とも言う。脳波は棘波。 ●意識の消失(1~2分:目撃情報は5分以上が多いが、動揺で長く感じがちなため)とともに強直発作が起こり、続いて間代発作に移行することが多い。 ●発作後に意識がもうろうとし、頭痛、尿失禁、外傷、舌を噛む、などの症状や事象が見られる。 |
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ミオクロニー発作 (小型運動発作) |
小型運動発作とも言う。1回の発作は1秒以下、反復して数秒間持続する場合がある。 ●筋の一部または筋群が瞬間的な不随意の収縮を示す(大脳皮質、基底核、脳幹、脊髄などの障害に起因 ●意識はあり、本人は、てんかんの症状だと思わないことが多い。 |
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欠神発作 (小発作) |
小発作とも言う。10~30秒のけいれん。脳波は衝動的で左右同期する3Hzの棘徐波複合。 ●意識が突然消失し、戻る ●過呼吸時に起こりやすい ●成人てんかんではまれ ●複雑部分発作と間違えやすい |
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脱力発作 (小型運動発作) |
小型運動発作とも言う。1回の発作は1~4秒。 ●姿勢保持筋の緊張の低下または消失により突然脱力する ●小児のレイノックス・ガストー症候群でよくみられる ●成人てんかんではまれ |
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部分発作 | 焦点が脳の1部位に限局しているもの | |
単純部分発作 (焦点発作) |
通常1分以内、短ければ1秒前後 ●発作時に意識が保たれている ●本人が症状を認識している ●過剰放電の起きる脳の部位によって出現する症状が異なる ●同じ患者では、同じ部位からの発作が起こりやすい |
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複雑部分発作 (精神運動発作) |
精神運動発作とも言う。30秒~3分(1~2分のことが多い) ●意識減損発作(意識消失はしておらず、転倒しない) ●本人は症状を認識していない ●目は開けていることが多い ●自動症が見られる ●成人では最も頻度が高い |
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※二次性全般化 | 部分発作から始まり、過剰放電が脳の電気経路全体に起きて全身けいれんに移行 | |
急性反応性発作 | 本来のてんかんと鑑別する必要のあるもの | |
失神 | 一過性の意識消失全般を含む。脳血流による短時間の可逆的な意識消失。特徴は、脳血流減少や原因が多様(強い情動・過換気症候群等)であること、発作後に意識変化や疲労、倦怠感を伴わないこと | |
一過性脳虚血発作 | 微小塞栓による脳局所・脊髄・網膜の虚血から生じる一過性の神経学的機能障害。通常24時間以内に回復し、画像上、脳梗塞巣は伴わない。特徴は、眼動脈領域では片目の視力消失、脳虚血の回復後、意識も自然かつ完全に回復。 | |
アルツハイマー | ゆるやかな発症と持続的な認知機能低下を特徴とする。中核症状は記憶障害と見当識障害。 | |
その他:心因性発作、過呼吸やパニック障害、脳卒中、急性中毒(薬物、アルコール)、急性代謝障害(低血糖、テタニー)、急性腎不全、頭部外傷直後 |
てんかんの作用機序

てんかんの機序は、GABAの減弱とグルタミンの亢進であるといわれる。
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