HbA1cとAGEs
HbA1c(へモブロビンエイワンシー)とは
HbA1cは、血液中のヘモグロビンA1cという形態のヘモグロビンの割合を示す指標です。これは、過去2?3ヶ月の平均血糖値を反映しており、糖尿病の診断や管理において重要な役割を果たします。具体的には、糖分子がヘモグロビンと結合することにより形成される、グリコヘモグロビン(糖化ヘモグロビン)の一種です。
HbA1cの測定値は、通常パーセント(%)で表されます。例えば、HbA1cが6%の場合、血液中のヘモグロビンの6%がグリコヘモグロビンであることを意味します。HbA1cの目標値は、一般的には7%未満とされていますが、患者の年齢や病歴、合併症のリスクなどによって異なる場合があります。
HbA1cの値が高いと、血糖コントロールが不十分であることを示し、合併症のリスクが高まる可能性があります。
以下、糖とタンパク質(ヘモグロビン)の反応により、AGEs(HbA1c)が生成する反応について説明します。
AGEs(最終糖化産物)の作用とメイラード反応
グルコース等の還元糖のカルボニル基とタンパク質のアミノ基が反応して、シッフ塩基であるイミンが生成する。この反応は可逆的でありグルコース濃度が高いほど生成側にシフトすることから、糖尿病患者ではシッフ塩基が増加している。
イミン(シッフ塩基)は不安定なため、分子内でアマドリ転移反応呼ばれる分子内転移反応を自発的に起こし、安定なケトアミン(アマドリ化合物)を生成する。
ここまでの反応(還元糖+タンパク質→シッフ塩基→アマドリ化合物まで)をメイラード反応の前期段階と呼ぶ。
ヘモグロビンのβ鎖のアミノ基が糖化されたものがHbA1cであり、アマドリ化合物の一つである。
アマドリ化合物から生成するα-ジカルボニル化合物(代表は3-DG:3-デオキシグルコソン)はタンパク質のアミノ基と反応してAGEs (advanced glycation end-products)や香気成分、メラノイジン(焦げやみその褐色成分で、高血糖で体が焦げるともいわれる所以)等を生成する。AGEsの生成は不可逆的に生体内でゆっくり生成、蓄積され、一度形成されると極めてゆっくりしか代謝されない。
このα-ジカルボニル化合物を生成する過程でスーパーオキシドが生成し酸化ストレスが産生される。
アマドリ化合物からAGEs等が生成するまでの段階が後期段階である。
AGEsの受容体がRAGE(receptor for AGE)であり、AGE自身により発現が誘導される。AGEは血管内皮細胞上に存在するRAGEによって認識されると、
- 炎症反応・・・NF-κBの活性化を介してさまざまなサイトカインや増殖因子の分泌を促進させる。AGEで酸化された酸化LDLがマクロファージの泡沫化を促進し、ケモカインや増殖因子を分泌。
- 内皮機能障害・・・酸化ストレスの亢進によるNOの不活性化
- 血栓傾向・・・内皮細胞のPGIの産生を抑える一方、PAI-1の合成を促進し、線溶活性を阻害して血栓の安定化に関わったり、血小板の凝集を促進する。
等が引き起こされる。
(参考:蛋白の糖化、調剤と情報2022.12)
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