接着/ケモカイン

アレルゲン(病原体)が体内に侵入すると、樹状細胞やマクロファージら抗原提示細胞(APC)に取り込まれ、樹状細胞やケラチノサイトら多くの細胞が発現しているTLRを介するシグナルが進行するとともに、アレルゲンがペプチド断片に分解される(貪食される)。

TLRを介したシグナルは、最終的にAP-1やNF-κBを活性化して数々のサイトカイン・ケモカインを産生させる。

アトピー性皮膚炎のAPCとして重要なのはマクロファージではなく、樹状細胞の一つであるランゲルハンス細胞や真皮樹状細胞である。

さて、APCには樹状細胞以外にもマクロファージもいまして(今でこそAPCとして重要なのは樹状細胞ですが、 、樹状細胞もマクロファージもやり取りは少し異なるものの大まかな流れは同じなので、APCが所属リンパ節や血管外へ遊走していくメカニズムをマクロファージを例に説明します。

アレルゲン侵入により各組織内or血液中にいるマクロファージはサイトカイン(IL-1、IL-12、TNF-α、IL-8、MCP-1)を分泌して、自身の活性化とT細胞の活性化を進行させます。

なお、白血球の走化に関する作用を示すサイトカインをケモカインと呼び、ケモカインはさらに好中球を遊走させるCXCケモカインと単球(マクロファージ)を遊走させるCCケモカインに分類できます。

最初にマクロファージがアレルゲンを発見したときに出すIL-8はCXCケモカインのひとつで、MCP-1はCCケモカインのひとつです。

サイトカイン役割
IL-1PGE2産生誘導、ヘルパーT細胞の活性化、急性期蛋白(ハプトグロビンetc…)を誘導
IL-12NK細胞を活性化し、IFN-γの産生を促す、Th0細胞からTh1細胞への分化を促進
TNF-α腫瘍細胞破壊、アポトーシス誘導etc...

ケモカイン産生細胞役割
IL-8単球、好中球、内皮細胞好中球走化性因子
MCP-1単球、内皮細胞単球走化性因子

ケモカインによるシグナル(IL-8、MCP-1等)を受けて血液中の白血球(マクロファージ・好中球)がそのアレルゲンの処理に向かいます。

好中球を炎症部位に引き寄せるサイトカインであるIL-8はマクロファージが分泌する以外にも、上皮細胞や内皮細胞、線維芽細胞も分泌します。

ここで、まず知っておいてほしいことが、アレルゲンには大きく2種あるということです。ひとつはダニ、花粉など体の中に入っても特に悪さをしないもので、主に血液中、組織液中に存在しているもの、もうひとつは、ウイルス、癌など体の中に入ると遺伝子レベルで悪さをするもので、主に細胞中に存在するものです。ウイルスは自分の持つRNAを宿主であるヒトのDNAに組み込むことができ、組み込まれたDNAはそのまま複製されるのでどんどんウイルス感染細胞は広がります。このことはこれから出てくる、体液性免疫と細胞性免疫という2つの言葉を理解するのに必要ですので覚えておいてください。

話は戻り、ケモカインにより呼び出されたマクロファージや好中球は、血液中のアレルゲンであればその場で捕獲して貪食しますが、細胞内のアレルゲンを捕獲するためには一旦血管の外へ出なくてはなりません。
この血液中から細胞内へ移動する、つまり血管壁を通過して目的の細胞に達するのに必要な作業が接着です。

接着のメカニズム

血中白血球(好中球、マクロファージ)が標的細胞付近に集積されると、白血球の外側にあるL-セレクチン(CD62L)分子が血管内皮細胞のムチン様分子と結合します。 この段階をローリングと呼び、結合力は弱いです。

なお、Eセレクチンはマクロファージが最初に出すTNF-αとIL-1、 そしてグラム陰性菌外膜のLPS(リポポリサッカライド)により活性化され、IL-4の作用で抑制される。

Pセレクチンは内皮細胞のWeibel-Palade体中に存在し、ヒスタミンとトロンビンにより一過性に活性化され、IL-4、IL-13、サブスタンスP(SP)により合成が促される。

速度の落ちた白血球は、内皮細胞上の(CD31、CD44)分子やマクロファージが産生  するケモカイン(IL-8、MCP-1)によって刺激を受けます(トリガリング)。

刺激を受けると、白血球表面にインテグリン分子(LFA-1、Mac-1=CD18)が発現し、さらに強く接着→はれて細胞内へ進入します。

ランゲルハンス細胞の場合は、表皮のケモカインLARCの受容体CCR6を持つことから、主として表皮に存在する。表皮に進入したダニなどの抗原を捕捉 後、TLRシグナルの活性化に順じて成熟化することでCCR7を発現するようになり、SLCを介してリンパ節へと ホーミングする。

ランゲルハンス細胞はマクロファージのように抗原貪食能力はなく、サイトカイン産生能力も持ちません。

しかし、アトピー性皮膚炎の病変の形成には、主に血液中に存在しているマクロファージよりも表皮のランゲルハンス細胞が大部分関与しています。

この表皮LCがアレルゲンを捕捉し、ケモカインによる接着・遊走の機序にてリンパ節に移動してヘルパーT細胞に抗原を提示することで、数々の炎症性サイトカインが産生されて炎症が起こります。

ランゲルハンス細胞は紫外線によりその活動が弱まるとされています(PUVA療法の機序)。



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