抗原の貪食、接着とケモカイン

ここでは、抗原(アレルゲン)が体内に侵入した時に、どのようにして免疫細胞(特に白血球や樹状細胞など)が血液中から標的組織へ移動(接着・遊走)して、抗原を貪食(取り込み)、分解、提示していくのかについて説明します。

ダニや細菌等のアレルゲンが侵入すると、近くの樹状細胞やマクロファージがTLR(toll-like receptor)・PAR-2(プロテアーゼ活性化受容体)などのPRR(パターン認識受容体)で抗原を認識し、以下のプロセスを同時に起こす。

  • 抗原の取込み(貪食)・・・エンドサイトーシスにて抗原を取り込み、エンドソームでペプチドまで分解し、MCHⅡに渡す。
  • PRRシグナルが核に伝わると、MyD88、TRIF、TIRAP等アダプタ蛋白を介して、NF-κBMAPK等の転写因子が活性化→IL-1β、IL-6、IL-8、IL-12、IL-23、IL-36、TNF-α、MCP-1などのサイトカインを分泌することで、自身の活性化とT細胞の活性化を進行させる。

抗原(アレルゲン)の認識

樹状細胞やマクロファージら抗原提示細胞(APC)は、細菌(LPS)が抗原の場合は主としてTLR4を介したシグナルを介して、最終的にAP-1やNF-κBを活性化しサイトカインを産生させますが、ダニ抗原の場合はプロテアーゼ活性を持つため、TLRだけでなくPAR-2も刺激してサイトカインの産生を行う。

細菌抗原ではマクロファージの反応が中心ですが、ダニ抗原では樹状細胞(DC)の一つであるランゲルハンス細胞(LC)や真皮樹状細胞(dDC)が中心となっている。

LCは表皮のケラチノサイトの間(有棘層)に存在しており、表皮の門番と言われている。LCは抗原を取り込んだ後、表皮からリンパ節へと移動し、Th2/Th17を誘導しやすいことからアトピー患者にとってDCはマクロファージよりも重要なAPCである。

APCの産生するサイトカイン

マクロファージやDCがTLRシグナル等により分泌するサイトカインには、

  • IL-1 → PGE2産生誘導、ヘルパーT細胞の活性化、急性期蛋白(ハプトグロビンetc…)を誘導するサイトカイン
  • IL-6 → 炎症を促進するサイトカイン。Th17やB細胞の分化を誘導
  • TNF-α → 腫瘍細胞破壊、アポトーシス誘導etc...
  • IL-36(LC/DC/Mφ) → 主に表皮のLCが産生する炎症性サイトカイン。皮膚の炎症を増幅。
  • IL-23(DC/Mφ) → CD4+T細胞亜群のTh17の維持・分化促進する炎症性サイトカイン→Th17はIL-17を産生
  • IL-12(DC/Mφ) → NK細胞を活性化し、IFN-γの産生を促す、Th0細胞からTh1細胞への分化を促進するサイトカイン。
  • IL-8(CXCL8) → 単球・好中球・内皮細胞で産生され、好中球を呼び寄せるケモカイン
  • MCP-1(CCL2) → 単球・内皮細胞で産生され、単球やマクロファージを呼び寄せるケモカイン

らがあり、白血球の走化に関する作用を示すサイトカインをケモカインと呼び、ケモカインはさらに好中球を遊走させるCXCケモカインと単球(マクロファージ)を遊走させるCCケモカインに分類できます。

マクロファージがアレルゲンを発見したときに出すIL-8はCXCケモカインのひとつで、MCP-1はCCケモカインのひとつです。

ケモカインによるシグナル(IL-8、MCP-1等)を受けて血液中の白血球(マクロファージ・好中球)がそのアレルゲンの処理に向かいます。

好中球を炎症部位に引き寄せるサイトカインであるIL-8はマクロファージが分泌する以外にも、上皮細胞や内皮細胞、線維芽細胞も分泌します。

ここで、まず知っておいてほしいことが、アレルゲンには大きく2種あるということです。ひとつはダニ、花粉など体の中に入っても特に悪さをしないもので、主に血液中、組織液中に存在しているもの、もうひとつは、ウイルス、癌など体の中に入ると遺伝子レベルで悪さをするもので、主に細胞中に存在するものです。ウイルスは自分の持つRNAを宿主であるヒトのDNAに組み込むことができ、組み込まれたDNAはそのまま複製されるのでどんどんウイルス感染細胞は広がります。このことはこれから出てくる、体液性免疫と細胞性免疫という2つの言葉を理解するのに必要ですので覚えておいてください。

接着

話は戻り、ケモカインにより呼び出されたマクロファージや好中球は、血液中のアレルゲンであればその場で捕獲して貪食しますが、細胞内のアレルゲンを捕獲するためには一旦血管の外へ出なくてはなりません。
この血液中から細胞内へ移動する、つまり血管壁を通過して目的の細胞に達するのに必要な作業が接着です。

接着のメカニズム

血中白血球(好中球、マクロファージ)が標的細胞付近に集積されると、白血球の外側にあるL-セレクチン(CD62L)分子が血管内皮細胞のムチン様分子と結合します。 この段階をローリングと呼び、結合力は弱いです。

なお、Eセレクチンはマクロファージが最初に出すTNF-αとIL-1、そしてグラム陰性菌外膜のLPS(リポポリサッカライド)により活性化され、IL-4の作用で抑制される。

Pセレクチンは内皮細胞のWeibel-Palade体中に存在し、ヒスタミンとトロンビンにより一過性に活性化され、IL-4、IL-13、サブスタンスP(SP)により合成が促される。

速度の落ちた白血球は、内皮細胞上の(CD31、CD44)分子やマクロファージが産生するケモカイン(IL-8、MCP-1)によって刺激を受けます(トリガリング)。

刺激を受けると、白血球表面にインテグリン分子(LFA-1、Mac-1=CD18)が発現し、さらに強く接着→はれて細胞内へ進入します。

ランゲルハンス細胞は、表皮のケモカインLARCの受容体CCR6を持つことから、主として表皮に存在し、ダニなどの抗原を捕捉後、TLRシグナルの活性化に順じて成熟化することでCCR7を発現するようになり、SLCを介してリンパ節へとホーミングする

ランゲルハンス細胞は紫外線によりその活動が弱まるとされています(PUVA療法の機序)。



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