尿路結石の薬と治療
尿路結石の薬
分類 | 成分名 | 商品名 | 規格・剤形・補足 |
---|---|---|---|
結石排出促進薬 | ウラジロガシエキス | ウロカルン | 規格:錠225㎎ 適応:腎結石・尿管結石の排出促進 |
尿アルカリ化薬 | クエン酸K・クエン酸Na | ウラリットU ウラリット |
規格:ウラリットUは配合散、ウラリットは配合錠、 適応:痛風or高尿酸血症における酸性尿改善とアシドーシスの改善、適応外で尿路結石の再発予防 クエン酸は弱酸性だがクエン酸塩はH+を奪うので弱アルカリ性 |
抗コリン薬 | チメピジウム | セスデン | 規格:カプセル30㎎(先発)、錠30mg(サワイ) 適応:(胃炎、胃・十二指腸潰瘍、腸炎、胆のう・胆道疾患、尿路結石)における痙攣並びに運動障害に伴う疼痛の緩解、膵炎に起因する疼痛の緩解 |
尿路結石について少し調べてみました。TG、Cre、BUN、尿酸が高い人はご注意を。
尿路結石の種類
尿路結石は、結石が腎臓にあるか、尿管にあるか、膀胱にあるかというだけの違いで、
- 腎結石
- 尿管結石
- 膀胱結石
- 尿道結石
の4つに分類でき、腎結石と尿管結石を上部尿路結石、膀胱結石と尿道結石を下部尿路結石と呼び、全てを合わせて尿路結石と呼んでいます。
結石の大部分は
- シュウ酸カルシウム(CaC2O4)
- リン酸カルシウム(Ca2(PO4)2)
のどちらか(特にシュウ酸カルシウム)で、9割以上を占めます。
残りは、5%程度で尿酸結石(H2Uまたはその塩NaHU)やシスチン結石(C6H12N2O4S2)の可能性もあります。
単位量当たりのシュウ酸含有量が多い食品は野菜類、いも類、豆類、アルコールです(茹でるとアクが出そうなもの)が、肉・魚・卵などの動物性たんぱく質も取りすぎるとシュウ酸濃度があがります。
通常、シュウ酸は腸管内でカルシウムと結合して不溶性のシュウ酸カルシウムを形成し、そのまま便として排泄されるが、食生活の欧米化などで脂肪摂取量が増え、脂肪が膵リパーゼにより腸管内で分解されて脂肪酸の量が増えると、脂肪酸がカルシウムと結合して不溶性の金属石鹸を形成し便として排泄、結合できずに余ったシュウ酸はそのままの形で吸収されて、腎臓で尿中に排泄→尿中のカルシウムと結合してシュウ酸カルシウムとなって結石の原因となります。
クエン酸も脂肪酸と同じように腸内でカルシウムと結合して、シュウ酸カルシウムとしての便排泄を抑制し、シュウ酸の吸収を高めますが、生成したクエン酸カルシウムは可溶性なのでこれもまた吸収されます。結果としてクエン酸もシュウ酸も尿中へ移動し、そこでクエン酸が尿中のカルシウムと結合して可溶性のクエン酸カルシウムとして結石は形成せずに尿中から排泄、シュウ酸もクエン酸のおかげでシュウ酸カルシウムを形成することなく尿中から排泄されます。
同じ弱酸の酢酸(酢の主成分)はカルシウムとの結合が弱いので、クエン酸に比べるとシュウ酸カルシウムを形成阻害作用は弱いです。
このことから、
- 脂肪酸の量が多い・・・シュウ酸の腸管からの吸収↑
- シュウ酸の摂取量が多い・・・シュウ酸の腸管からの吸収↑
- カルシウム・マグネシウム不足・・・・腸内でシュウ酸カルシウムの形で排泄↓→尿中のシュウ酸↑
- クエン酸不足・・・尿がアルカリ側に傾くことによりシュウ酸イオン↑→尿中シュウ酸Ca↑
- 水分不足・・・シュウ酸Caの溶解度低下
- 動かないもしくは尿路の通過障害
- 尿路感染
らが結石が出来る要因です。
尿路結石の多くは、水分不足かつ不動という状態が長く続く寝ているときに、尿管ではなく、腎臓で作られて、その結石が他の臓器に移動して症状を引き起こします。
結石の痛みは、尿管を結石が通るときに尿管に引っかった時の痛み(疝痛)と尿管を結石が塞いで圧がかかることによる痛み(鈍痛)があり、前者は結石がつかえた部位の痛み(部位により痛みの部位は異なる)で、後者は腎臓の痛み(背中の痛み)を生じます。
また、尿酸結石も原因の一つで、プリン体の多い肉類過剰の食事や、水分不足で尿酸の量が増えると、結石ができやすくなります。アロプリノール等の尿酸排泄促進薬を使用していると尿中の尿酸が高くなるので、これも尿酸結石の原因の一つとなります。
シスチン結石という遺伝的な代謝障害が原因で形成される結石もあります。
尿路結石、痛風、尿石、水垢、金属石鹸、油脂の除去
尿路結石
シュウ酸、リン酸、炭酸はいずれも弱酸で平衡状態を保っているが、アルカリ性条件下では、平衡状態がプロトン(H+)を失う方にシフトし、イオン化した形(C2O4^2-やPO3^3-、CO3^2-)になりやすくなる。
- H2C2O4 ⇔ H^+ + HC2O4^-
- HC2O4^- ⇔ H^+ + C2O4^2-
イオン化した形はカルシウムイオンと結合して不溶性の結晶を形成する。(例:シュウ酸カルシウムの生成反応:Ca^2++C2O4^2-⇔CaC2O4)
そのため、尿(通常弱酸性から中性:pH4.6~8.0)を酸性にしたり、出来た結石を溶かすために酸(塩酸HClやクエン酸C6H8O7)が必要となる。
- CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + CO2 + H2O
なお、食酢の主成分である酢酸もカルシウムと結合するが、クエン酸ほど結合力が強くないため、酢酸によるシュウ酸カルシウム形成阻害作用はほとんどない。
一方、尿酸(C5H4N4O3=ここではH2Uと表記)の反応式は、
- H2U ⇔ H^+ + HU^-
- HU^- ⇔ H^+ + U^2-
となっており、尿酸H2U自体が結石の要因となっているので、酸性条件下(pH<5.5)では溶解度が低く結晶化しやすくなり、アルカリ性条件下では尿酸H2Uが減少するため、クエン酸Kや炭酸水素Na等のアルカリ性医薬品を投与することは尿酸結石を治療できる。
シスチン結石も酸性条件下で溶解度が低くなるため結晶化しやすくなり、アルカリ性条件下では溶解度が増して結晶化しにくくなる。
痛風
痛風による関節炎の原因は、尿酸結石を形成する尿酸(H2U)ではなく、尿酸ナトリウム(NaHU)が関節などへ結晶として沈着するためである。
アルカリ側にシフトさせることで尿中のNaHUは増加しますが、尿酸イオンが尿から排泄されて、血中の尿酸(H2U)と尿酸ナトリウム(NaHU)は減少するため、結果として痛風のリスクを軽減できる。
尿石
トイレの表面に付着する尿石の主成分は、炭酸カルシウム(CaCO3)と炭酸マグネシウム(MgCO3)である。
原料の炭酸イオンとカルシウムイオン、マグネシウムイオンは尿中に炭酸水素カルシウム(Ca(HCO3)2)等の形で溶解しているが、尿中の尿素が時間とともにアンモニアに変化するとアルカリ側にシフトし、炭酸カルシウム等が析出してくる。
尿石の除去は炭酸カルシウムに塩酸や有機酸(クエン酸など)を振りかけることで、炭酸イオンを酸化させてカルシウムを再イオン化させる必要がある。
- CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + CO2 + H2O
よって、尿石の除去には酸性洗浄剤を使用する。サンポールレベルで溶けない場合は便器のような陶器であればサンドペーパー(60番でもいける)やメラミンスポンジのような研磨用品や研磨剤が使用できる(研磨用品は水で使用)。
水垢
水垢の主成分も尿石と同じで、炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムである。
硬水は炭酸水素カルシウムの形で水に溶解している(CaCO3+CO2+H2O→Ca(HCO3)2))が、水の蒸発や水のpHがアルカリ側にシフトすると、炭酸カルシウムが沈殿しやすくなる。
また、炭酸カルシウムは温度が上がると溶解度が逆に低下する(温水器の汚れ等)ので、清掃時は温度を上げない方がいい。
よって、水垢の除去には酸性洗浄剤を使用する。ステンレスやプラスチック、ガラスは研磨剤で傷つきやすいので研磨は控える。(特にメラミンスポンジの使用)
金属石鹸
石鹸は脂肪(オリーブオイル等)に強アルカリ(水酸化ナトリウム等)を加えて、脂肪酸のナトリウム塩である石鹸とグリセリンを作るけん化反応である(オリーブ石鹸の作り方)。
石鹸は水に溶けると疎水部分が油汚れに、親水部分が水と接して、疎水部分で汚れを囲い込む形(ミセル)を形成することで汚れを除去する(界面活性作用)。
脂肪酸のナトリウム塩はこのような働きをするが、脂肪酸がカルシウムやマグネシウムと結合すると難溶性の塩を形成してしまい、金属石鹸となって汚れの原因の一つとなる。
入浴時に石鹸の脂肪酸イオンが水道水に含まれるカルシウム等の金属イオンと結合することで金属石鹸は生成する。
アルカリを加えて作られる金属石鹸は、酸を加えると脂肪酸と金属塩にもどるため、酸性洗浄剤を使用する。
皮膚は弱酸性、石鹸はアルカリを加えて作られ、アルカリの残留物が残っている関係で弱アルカリ性。
油脂・タンパク質
油汚れの原因となる油脂類は、界面活性剤が入って入れば酸性でもアルカリ性でも中性でもよい。
酸+界面活性剤であれば、そのまま界面活性剤でミセル形成して除去するか、酸で油脂を加水分解してグリセリンと脂肪酸にしてから除去する。
水酸化Na入りのアルカリ+界面活性剤であれば、アルカリで油脂を石鹸にしてから除去することも可能。
車や自転車のよごれは金属腐食作用が少ない中性+界面活性剤がよいのかもしれない。
タンパク質も酸でもアルカリでも加水分解はされる。
まとめ
以下より、台所は基本アルカリ(カビキラーでも可)で、落ちない金属塩は金属以外は酸で。浴室は基本酸でガラス以外はアルカリで。トイレは酸で。他は中性か弱アルカリの界面活性剤入りで洗浄剤がベストか。
- 尿路結石・・・結石の種類によって対処法違う
- 痛風・・・尿をアルカリ化する
- 尿石・・・炭酸カルシウムを溶かすために酸性洗浄剤
- 水垢・・・炭酸カルシウムを溶かすために酸性洗浄剤
- 金属石鹸・・・金属石鹸を溶かすために酸性洗浄剤
- 油脂・・・界面活性剤入り、アルカリだとけん化させ洗浄力が酸よりよい
- タンパク質・・・アルカリでも酸でも加水分解はされるが一般には安全性の高いアルカリ
- カビ・・・もちろん次亜塩素酸。ジョンソンのカビキラーや花王のカビハイターには次亜塩素酸だけでなく水酸化Na(0.5%)や界面活性剤も入っていてアルカリ性であるため、カビだけでなく台所の食事汚れにも効く。ハイターは次亜塩素酸に水酸化Naだけが混ざっていて界面活性剤が入っていない。
- リンレイの油汚れ用洗剤・・・アルカリ性、水酸化Na(2.5%)、水酸化K(0.8%)、界面活性剤(アルキルベダイン)、溶剤(グリコールエーテル)。アルミ、銅、ガラス、(ワックス)フローリング床、家具、自動車、食器類などが禁忌
- リンレイの浴室用洗剤・・・弱アルカリ性、界面活性剤(2.8%アルキルグルコシド)、溶剤、金属封鎖剤、除菌剤。木製品、大理石、アルミサッシ、しっくい壁、照明器具本体が禁忌
- トイレ用洗浄剤・・・酸性、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、塩酸(7.5%)。便器やタイル等の陶器に。金属、大理石、表面に特殊な加工禁忌。ちなみにサンポールは塩酸(9.5%)で界面活性剤は入ってない。濃度10%以上は劇物指定。
尿路結石の治療
直径5mm以下の小さなものであれば、尿管を引っかかりながらも最終的に尿として排泄されるので、痛み止め(坐薬)で数週間しのぎながら自然と排泄されるのを待ちます。
尿酸結石やシスチン結石は結石溶解薬で溶けるので薬物での治療を行いますが、シュウ酸カルシウム結石やリン酸カルシウム結石は薬で溶解しません。
そのため、これらの結石で1cmを超えるような大きなものは、自然での排泄は困難なので、手術の適応となります。
手術には
- ESWL(体外衝撃波結石破砕術)・・・体外からの衝撃波を用いて結石を細かく砕く非侵襲的な手術方法。結石は衝撃波によって小さな破片に分解され、その後自然に尿と共に排出されます。大きすぎる結石は分解できないか分解して細かくしても排泄できないことがあるので小さな結石に対して行われます。
- TUL(経尿道的結石破砕術)・・・尿の出口から尿道や膀胱に内視鏡を通して尿管や膀胱内の結石をレーザー、超音波などで直接破砕する方法です。下半身麻酔だけで済み低侵襲で、ESWLより大きな結石も砕くことが出来ます。排泄経路が尿道からなので結石を取り除きずらいです。
- PNL(経皮的腎結石除去術)・・・背中の皮膚を通じて腎臓に小さな穴を開け、直接結石を取り除く手術方法です。大きな結石でも腎臓内(腎杯など)の結石も砕くことが出来、尿道からよりも広い背中の出口からTULより大きい状態で取り除くこともできます。
の3種があります。PNLは背中から直線的にしか処置が出来ないので、TULで砕いて、PNLで背中から取り除くといった併用した治療も行われています。
尿路結石の予防
結石を予防する方法としては、
- 食塩と糖分を減らすこと(これらはCaの再吸収抑制により、尿中Caを増加させる)
- 脂肪を減らすこと(脂肪酸が腸内でカルシウムと結合してしまうため)
- カルシウムを摂取すること(カルシウムが腸内でシュウ酸と結合して吸収を妨げてくれる)
- 夜間の食事を控える(寝る直前の食事は寝ている長い時間の間に尿中に排泄→そのまま高濃度の尿ができて結石ができやすくなるため)
- 野菜果物を適度に摂取する(摂取し過ぎはシュウ酸のとりすぎに、適度でクエン酸を摂ることができます)
クエン酸は医薬品のウラリットでも補充可能。
クエン酸はTCAサイクルで代謝されて、CO2とH2Oを生成し、炭酸脱水酵素の作用で重炭酸イオン(HCO3-)とH+に分かれる。 クエン酸も炭酸も酸性であるが、分解されたHCO3-はアルカリ性であり、H+と引き換えに血中と尿細管内を平衡状態で行き来しており、尿が酸性の時にクエン酸を摂取することで、HCO3-を尿中に移動させて平衡をアルカリ側に傾けることができる。
クエン酸で尿路結石を予防できるのはあくまで尿が酸性の場合であり、アルカリ性に傾きすぎてもシュウ酸カルシウム結石やストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石ができやすくなるので注意する。(アルカリ尿を作るのはプロテウス)。 - ビールを控える(ビールはプリン体とシュウ酸が多いため)
等が挙げられます。
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