目次
抗真菌薬一覧
分類 | 成分名 | 商品名 | 規格・剤形・補足 |
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ポリエンマクロライド系 (深在性) |
アムホテリシンB | ファンギゾン | 規格:シロップ、注射用 適応:【注射】深在性真菌感染症、【内服】消化管におけるカンジダ異常増殖 |
ハリゾン | 規格:シロップ、錠100㎎ 適応:上に同じ |
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アムビゾーム | 規格:点滴静注 適応:真菌血症、呼吸器真菌症、真菌髄膜炎、接触性真菌症 |
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フルオロピリミジン系 (深在性) |
フルシトシン | アンコチル | 規格:錠500㎎ 適応:真菌血症、真菌性髄膜炎、真菌性呼吸器感染症、黒色真菌症、尿路真菌症、消化管真菌症 TS-1と併用不可 |
イミダゾール系 (深在性・表在性) |
ミコナゾール | フロリード フロリードD フロリードF |
規格:ゲル経口用、膣坐剤(N)、クリーム(D)、注(F) 適応:【ゲル経口用】口腔カンジダ、食道カンジダ、【膣坐剤】カンジダ起因の膣炎、【クリーム】カンジダ症、白癬、癜風、【注射】真菌血症、肺真菌症、消化管真菌症、尿路真菌症、真菌髄膜炎 |
イミダゾール系 (表在性) |
クロトリマゾール | エンペシド タオン |
規格:トローチ、クリーム、外用液、膣錠、ゲル(タオンのみ) 適応:【トローチ】HIV感染症の口腔カンジダ、【クリーム・ゲル・外用液】白癬、カンジダ症、癜風、【膣錠】カンジダ性膣炎及び外陰膣炎 |
イソコナゾール | アデスタン | 規格:クリーム、膣錠100㎎(GEのみ)/300㎎ 適応:【クリーム】白癬、カンジダ症、癜風、【膣錠】カンジダに起因する膣炎及び外陰膣炎 |
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スルコナゾール | エクセルダーム | 規格:クリーム、外用液 適応:白癬、カンジダ症、癜風 |
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オキシコナゾール | オキナゾール | 規格:クリーム、外用液、膣錠100㎎/600mg 適応:【クリーム・外用液】カンジダ、白癬、癜風、【膣錠】カンジダに起因する膣炎及び外陰膣炎 |
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ビホナゾール | マイコスポール | 規格:クリーム、外用液 適応:白癬、カンジダ症(指間びらん症、間擦疹、皮膚カンジダ症)、癜風 |
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ケトコナゾール | ニゾラール | 規格:クリーム、ローション、外用液と外用ポンプスプレーはGEのみ 適応:白癬、皮膚カンジダ、間擦疹、癜風、脂漏性皮膚炎 |
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ネチコナゾール | アトラント | 規格:軟膏、クリーム、外用液 適応:白癬、皮膚カンジダ症、癜風 |
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ラノコナゾール | アスタット | 規格:軟膏、クリーム、外用液 適応:白癬、カンジダ症、癜風 |
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ルリコナゾール | ルリコン | 規格:軟膏、クリーム、液 適応:白癬、カンジダ症、癜風 |
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ルコナック | 規格:爪外用液 適応:上に同じ |
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トリアゾール系 (深在性) |
フルコナゾール | ジフルカン | 規格:カプセル50㎎/100mg、DS、静注 適応:真菌血症、呼吸器真菌症、消化器真菌症、尿路真菌症、真菌髄膜炎(カンジダ、クリプトコックスのみ)、造血幹細胞移植患者の深在性真菌症予防、【カプセル】カンジダ属に起因する膣炎及び外陰膣炎 |
ホスフルコナゾール | プロジフ | 規格:静注 適応:カンジダ属、クリプトコックス属による感染症 |
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ポリコナゾール | ブイフェンド | 規格:錠50㎎/200mg、DS、静注、GEは錠100㎎も有 適応:重症又は難治性真菌感染症、【内服のみ】食道カンジダ症 |
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ポサコナゾール | ノクサフィル | 規格:錠100㎎、点滴静注 適応:造血幹細胞移植患者又は好中球減少が予測される血液悪性腫瘍の深在性真菌症の予防 |
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トリアゾール系 (深在性・表在性) |
イトラコナゾール | イトリゾール | 規格:カプセル50㎎、内用液、注、GEは錠50㎎/100mg/200mgも有 適応:内蔵真菌症、深在性皮膚真菌症、表在性皮膚真菌症、爪白癬、食道カンジダ症、ブラストミセス症、ヒストプラスマ症、発熱性好中球減少症、口腔咽頭カンジダ症、好中球減少が予測される血液悪性腫瘍又は造血幹細胞移植患者の深在性真菌症の予防 |
エフィナコナゾール | クレナフィン | 規格:爪外用液 適応:爪白癬 |
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ホスラブコナゾール | ネイリン | 規格:カプセル、分1、12週間 適応:爪白癬、皮膚糸状菌(トリコフィトン属) |
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キャンディン系 (深在性) |
ミカファンギンNa | ファンガード | 規格:点滴 適応:アスペルギルス属、カンジダ属による真菌血症、呼吸器真菌症、消化管真菌症、造血幹細胞移植患者におけるアスペルギルス症及びカンジダ症の予防 |
カスポファンギン酢酸塩 | カンサイダス | 規格:点滴静注 適応:真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症、カンジダ属、アスペルギルス属による食道カンジダ症、侵襲性カンジダ症、アスペルギルス症 |
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アリルアミン系 (深在性・表在性) |
テルビナフィン | ラミシール | 規格:錠125㎎、クリーム、外用液、外用スプレー 適応:【内服】深在性皮膚真菌症(白癬性肉芽腫、スポロトリコーシス、クロモミコーシス)、表在性皮膚真菌症(白癬、カンジダ症)【外用】白癬、皮膚カンジダ症、癜風 |
チオカルバメート系 (表在性) |
リラナフタート | ゼフナート | 規格:クリーム、外用液 適応:白癬 |
ベンジルアミン系 (表在性) |
ブテナフィン | メンタックス ボレー |
規格:クリーム、外用液、スプレー 適応:白癬、癜風 |
モルホリン系 (表在性) |
アモロルフィン | ペキロン | 規格:クリーム 適応:白癬、皮膚カンジダ症、間擦疹、癜風 |
その他 (表在性) |
トルナフタート | ハイアラージン | 規格:軟膏、外用液 適応:汗疱性白癬、頑癬、小水疱性斑状白癬、癜風 |
ニューモシスチス肺炎治療薬 | ペンタミジニセチオン酸塩 | ベナンバックス | 規格:注 適応:ニューモシスチス肺炎 |
アトバコン | サムチレール | 規格:内用懸濁液 適応:ニューモシスチス肺炎 |
水虫については、白癬(水虫)を参照。
真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロール(人はコレステロール)の合成は↓のように行われるが、このエルゴステロールの合成を各箇所で阻害する薬が抗真菌薬となる。
アセチルCoA→ヒドロキシメチルグルタニルCoA(HMG-CoA)→①→メバロン酸→スクワレン→②→スクワレンエポキシド→ラノステロール→2,4-メチレンジヒドロラノステロール→③→デスメチルステロール→④⑤→エルゴステロール
①はレダクターゼ、②のエポキシ化する酵素がスクワレンエポキシダーゼ、③の酵素がラノステロール14α脱メチル酵素(P450)、④⑤がステロール△14レダクターゼ反応及びステロール△8,7-イソメラーゼ反応、
真菌の種類
真菌は様々なグループに分けることができ、以下に主要な真菌の分類を示します。
- 糸状菌(Filamentous Fungi): 菌糸(hyphae)を形成し、それらが集まって菌糸体(mycelium)を作ります。例えばアスペルギルス(Aspergillus)やペニシリウム(Penicillium)などが含まれます。
- 酵母菌(Yeasts): 単細胞の真菌で、増殖は通常出芽により行われます。カンジダ(Candida)やサッカロミセス(Saccharomyces)などが酵母菌に分類されます。
- 担子菌(Basidiomycetes): 担子胞子を形成する特徴を持ち、多くの場合、大型の子実体(例えばキノコ)を形成します。シイタケやマツタケなどの食用キノコが担子菌に分類されます。
- 子嚢菌(Ascomycetes): 子嚢胞子を形成し、多くの医薬品や食品に関連する真菌が含まれます。例えば、ペニシリウム属の一部の種(抗生物質ペニシリンの生産者)など。
- 接合菌(Zygomycetes): 接合胞子を形成し、菌糸が特徴的な構造を持つことが多いグループです。
真菌の感染症は通常健康な人には起こりません。全て免疫機能が低下している人に対して感染する日和見感染です。
- 糸状菌
- アスペルギルス属(Aspergilosis)・・・外から
- 白癬菌(Trichophyton)・・・常在菌
- 酵母
- カンジダ属(Candiasis)・・・常在菌
- クリプトコッカス属(Cryptococcosis)・・・外から
- ニューモシスチス属(Pneumocystis)・・・外から
- 癜風菌(Tinea versicolor)・・・常在菌
各抗真菌薬の特徴
ポリエンマクロライド系
ポリエン系抗生物質はアムホテリシンBのみであり、真菌、原虫の細胞質中のエルゴステロールと結合して膜機能を傷害する。人のような真核生物のステロールはエルゴステロールではなくコレステロール であるため、その影響はきわめて低い。
ファンギゾンシロップはうがい目的で適応外処方されることがある。
アムホテリシンBは効果は高いが、腎毒性、低カリウム、低マグネシウム血症、骨髄抑制が知られているため、クリプトコッカス髄膜炎以外では第一選択にはならない。
アゾール系(イミダゾール系+トリアゾール系)
アゾール系抗生物質は、真菌のシトクロムP-450(うちラノステロールのC-14のメチル基を脱メチル化するもの)を阻害し、真菌細胞膜成分であるエルゴステロールの合成を阻害する。
しかし、いくら真菌のP-450に選択性があるといっても、多少は人のP-450(特にCYP3A4)にも影響するため、CYP3A4で代謝される薬剤の血中濃度が上昇するという副作用を考えなければならない(ただし、肝初回通過効果を受けない外用剤は除く)。
テルビナフィン(その他の抗真菌薬)、イトラコナゾールの2剤は爪白癬の第一選択薬ですが、これらは皮膚の角質層や爪の中のケラチンと結合しやすいという性質を持っていて、皮膚や爪の中へすばやく浸透します。
イトリゾールを内服すると24時間で爪に達し、7日後には爪の先端まで達します。服用終了後も半年は十分な濃度の薬剤がとどまっているというデータもあります。
以下イトリゾールの併用禁忌の薬剤名。
一般名 | 商品名 |
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ピモジド | オーラップ |
キニジン | 硫酸キニジン |
ベプリジル | ベプリコール |
トリアゾラム | ハルシオン |
シンバスタチン | リポバス |
アゼルニジピン | カルブロック、レザルタス |
ニソルジピン | バイミカード |
エルゴタミン | クリアミン |
ジヒドロエルゴタミン | ジヒデルゴット |
エルゴメトリン | エルゴメトリンマレイン酸塩 |
メチルエルゴメトリン | メテルギン |
バルデナフィル | レビトラ |
エプレレノン | セララ |
ブロナンセリン | ロナセン |
シルデナフィル | レバチオ |
タダラフィル | アドシルカ |
アリスキレン | ラジレス |
ダビガトラン | プラザキサ |
リバーロキサバン | イグザレルト |
リオシグアト | アデムパス |
チカグレロル | プリリンタ |
キャンディン系
キャンディン系抗真菌薬ではミカファンギン(点滴)が代表格。他の抗真菌薬が細胞膜のエルゴステロール阻害に対して、こちらは細胞壁のβDグルカンを阻害して抗真菌作用を示す。
クリプトコッカスは細胞壁がないので効果が無効。→アスペルギルス属、カンジダ属にのみ有効で安全性が高い。
副作用は消化器症状
抗真菌外用薬
1日2~3回使用の抗真菌外用薬
1日1回製剤に比べると抗菌力が大分弱い、皮膚貯留性が悪く長時間作用しないため、水虫の治療にこれらを使用するメリットはほぼなく、現在はほとんど使用されていない。
商品名 | 一般名 | 作用機序 | メーカー |
---|---|---|---|
ハイアラージン | トルナフタート | 細胞膜障害 | 長生堂 |
エンペシド | クロトリマゾール | 細胞膜障害、③ | バイエル |
パラベール | エコナゾール | 細胞膜障害 | 大塚 |
アデスタン | イソコナゾール | 細胞膜障害 | バイエル |
エクセルダーム | スルコナゾール | 細胞膜障害 | 田辺三菱 |
オキナゾール | オキシコナゾール | 細胞膜障害 | 田辺三菱 |
フロリードD | ミコナゾール | 細胞膜障害 | 持田 |
1日1回使用の抗真菌外用薬
1日1回使用の外用剤として最も古いマイコスポールは白癬・カンジダ・癜風と広く適応を持つものの、抗菌力は他の1日1回製剤に比べると弱く、徐々に使われなくなってきている感があります。
他白癬・カンジダ・癜風全てに適応がある薬剤は、ラミシール、ニゾラール、アトラント、アスタット、ルリコン、ペキロンがあり、白癬と癜風のみに適応があるのがメンタックス、白癬しか適応を持たないのがゼフナートということになります。
ニゾラールは白癬への効果はいまいちですが、癜風やカンジダに対する効果は他の抗真菌薬に比べて高いのでそちらに使われることが多いです。またニゾラールは1日2回で脂漏性皮膚炎の適応も有り、脂漏性皮膚炎の薬としての確固たる地位を築いているようにも思えます。
商品名 | 一般名 | 作用機序 | メーカー |
---|---|---|---|
クレナフィン | エフィナコナゾール | ③ | 科研 |
ゼフナート | リラナフタート | ② | 鳥居 |
ルリコン | ルリコナゾール | ③ | ボーラ |
メンタックス ボレー |
ブテナフィン | ② | 科研 久光 |
ラミシール | テルビナフィン | ② | ノバルティス |
ペキロン | アモロルフィン | ④⑤ | 杏林 |
アスタット | ラノコナゾール | ③ | マルホ |
アトラント | ネチコナゾール | ③ | 久光 |
マイコスポール | ビホナゾール | ①③ | バイエル |
ニゾラール | ケトコナゾール | ③ | ヤンセン |
1日1回の長時間作用型外用剤の効果比較
下記の表は各薬剤の治験での有効率や最小発育阻止濃度(MIC)を比べたものです。
()でくくってある数字はMIC90(90%以上発育を阻止する濃度)になります。データが見当たらなかったものに関しては空欄にしてあります。
足白癬(水虫)の原因菌としては、Trichophyton rubrum(紅色白癬菌)とTrichophyton mentagrophytes(毛瘡菌, 趾間)菌、Microsporum canis(イヌ小胞子菌)、Microsporum gypseum(石膏状小胞子菌)、Epidermophyton floccosum(鼠径表皮菌)らがありますが、原因菌の90%は紅色白癬菌と(毛瘡菌, 趾間)菌の2つですので、これらの真菌に対するMICが低いほど抗真菌活性が高いと言えます。
Microsporum canisは、猫に寄生しているため、小児・猫飼育者による感染報告が多い。Microsporum gypseumは、土壌に寄生しているため、土いじりを好む小児に感染しやすい。Trichophyton tonsuransは、近年10代の柔道・レスリング選手を中心に流行している原因菌である。試合などで皮膚が接触したりすることにより感染が広まっている。(wikiより引用)
データだけを見るとルリコンが頭ひとつ抜きでて効果が良いように見えますね。
有効率を各薬剤について見てみると、どの薬剤でも【クリーム>軟膏>液】のようになっているのがわかるかと思います。
なぜクリームの吸収率が高いのかは、基剤の種類と特徴を参照。
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