Toll様受容体(Toll-like receptor:TLR)
Toll様受容体は、主として微生物感染を感知して、Th1を誘導するシステムで、NK細胞らと共に自然免疫に関わっている。
TLRファミリーは、人ではTLR1~TLR13まで13種類あり、1回膜貫通部分を持つ受容体です。
IL-1RやTNFRと相同性が高く、お互いにクロストークしながらNF-κBの活性化に関与している。TLRsとIL-1β受容体の細胞質領域は、Toll/IL-1receptor(TIR)ドメインと呼ばれている。
RIP-1に結合しているTRAF6はCYLDとNEMOにて複合体を作っているが、IKKによるNEMOのリン酸化が起こるとCYLDが外れて、TRAF6の自己ユビキチン化が起こる。
TRAF6(tumor necrosis factor receptor associated factor)はTRAFファミリーの中で唯一、Ubc13/Uev1A(ユビキチンE2=ユビキチン結合酵素/ユビキチンE3=ユビキチンリガーゼ)活性を持ち、自身をポリユビキチン化すると、TAB2(TAK1-binding protein 2)と呼ばれるアダプター分子を介して、TAK1を活性化する。 TAK1はIKKsをリン酸化することで、NF-κBを活性化する。
また、TLRからのシグナルは、MyD88(Myeloid differentiation primary response gene 88)またはTIRAP(TIR domain-containing adaptor protein)/Mal(MyD88 adaptor-like)と呼ばれるアダプター分子を介してIRAK(IL-1 receptor-associated kinase)-TRAF-6へ伝達され、NIKが活性化、IKKsをリン酸化してNF-κBが活性化される。
こうしたシグナル伝達はいろいろなアダプター分子が複雑に関与しているため、どの経路が正しいとは一概には言えない。
受容体 | 分類 | リガンド |
TLR1 | 脂質 | リポタンパク |
TLR2 | リポタンパク | |
TLR3 | 核酸 | 2本鎖RNA |
TLR4 | 脂質 | リポタンパク |
TLR5 | タンパク質 | フラジェリン |
TLR6 | 脂質 | リポタンパク |
TLR7 | 核酸 | 抗ウィルス薬、1本鎖RNA |
TLR8 | ||
TLR9 | CpG DNA | |
TLR10(人のみ) | 脂質 | リポタンパク |
TLR11(マウスのみ) | タンパク質 | プロフィリン |
TLR12(マウスのみ) | 不明 | 不明 |
TLR13(マウスのみ) | 不明 | 不明 |
アトピー性皮膚炎で重要な、皮膚に発現するTLRは以下の表のようなものです。
部位 | 細胞 | TLR |
表皮 | ケラチノサイト | TLR1,2,4,5 |
ランゲルハンス細胞 | TLR2,4,9 | |
真皮 | 樹状細胞 | TLR1,2,4,5,6,8 |
マスト細胞 | TLR1,2,3,4,6,7,9 | |
血管内皮細胞 | TLR2,4 |
TLRのリガンドで重要なものはグラム陰性菌のLPS(リポポリサッカライド)に代表されるリポ多糖、リポタンパクなどの脂質である。これらの脂質は表にあるように、主にTLR4、TLR2により認識される。
運動性細菌の鞭毛構成タンパクであるフラジェリンはTLR5に、細菌やウィルスに高率に認められるCpG DNA(非メチル化CpGモチーフを含むDNA)はTLR9に、また、RNAウィルスの場合、2本鎖DNAはTLR3に、1本鎖DNAはTLR7、TLR8により認識される。
CpG DNAは,細菌のDNAに一般的に見られるもので、哺乳類DNAはCpGモチーフが極めて少なく,ほとんどがメチル化されており免疫賦活活性を有しない。マウスのみに発現しているTLR11はPI(4,5)P2から誘導されるプロフィリンをリガンドとする。
脂質・タンパク成分は細胞表面で認識されるが、核酸成分はエンドソーム内で認識される。すなわち、TLR2、TLR4、TLR5は細胞表面に発現されているが、 TLR3、TLR7、TLR8、TLR9はエンドソーム内に発現している。
これらのリガンドの中で、CpG DNA、RNAは微生物だけでなく宿主にも少なからず存在するので、TLR7~9に対して作用しうる。
核酸成分TLRリガンドはIFN-α、IFN-βの双方を産生誘導でき、MHCの分子の発現の増強や、樹状細胞の成熟を誘導することでTh1を活性化する。
これによりTh1誘導性のサイトカインの産生が高まり、Th1優位となる。
TLR7、TLR9によるIFN産生誘導の主役はPDC(Plasmactoid dendritic cell:形質細胞様樹状細胞)という樹状細胞のサブセットである。PDCはTLR7、TLR9を選択的に発現していて、IFN-αを産生するという。
また、線維芽細胞もTLR2/3/4/9、特にTLR3とTLR4を強く発現していて、MyD88を介して数々の転写因子を活性化して最終的にRANTES産生を亢進させる。
なお、TLR4のシグナル伝達経路には一番上の図にもあるように、MyD88を介さない経路も存在していて、この経路はアダプター分子TRIF(TIR domain-containing adaptor inducing interferon-beta)/TICAM-I(TIR domain-containing adaptor molecule-1)とTRAM(TRIF-related adaptor molecule)を介して遅延するシグナルの活性化と転写因子interferon regulatory factor3(IRF3)の活性化によるIFN-βを発現を誘導してIFN誘導性遺伝子(ケモカインIP-10やGARG16等)を産生させる。
このように、宿主内の核酸もエンドソーム内でTLRを介してTh1を活性化し、Th2型アレルギーを抑制することから、今後、B細胞・PDCのTLR9やPDCのTLR7を刺激して1型IFNを遊離させるアトピー性皮膚炎の治療法も出てくるかもしれない。
- DNAと遺伝子とは
- DNAの転写
- タンパク質の合成
- 初期mRNAを作るまで
- チロシンキナーゼ型受容体
- JAK-STAT型受容体
- TGF受容体
- TNF受容体
- Wnt受容体
- Notch受容体
- Toll-like受容体
- NOD-like受容体
- RIG-like受容体
- MAPKカスケード
- タンパク質の分解
- 癌抑制遺伝子p53
- CKIとは?
- 細胞周期
- DNAの複製
コメントor補足情報orご指摘あればをお願いします。
- << 前のページ
- 次のページ >>