癌抑制遺伝子p53
なぜ癌?と言われそうなのも合わせて、今どこら辺をやっているかについて述べておきます。実は、もう初期mRNAを作るところは通りこしてしまっていて、 二次mRNAのあとまで来ています(まだS期には入っていません)。
癌抑制遺伝子は、細胞の異常な増殖を止めている遺伝子のこと(必要なときのみ増殖を許可)で、p53以外にも、Rb、APCをはじめとして20種類が同定されている。
下図はTNF受容体の項でも使用した図ですが、p53の説明にも有用です。というのは、p53の増殖抑制の経路には、カスパーゼの活性化を介してアポトーシスを誘導する経路と 間接的にRbタンパク質に働きかけてS期に入るのを止める経路があります。
DNAに損傷が起こると、リン酸化酵素であるATM(ataxia telangiectasia mutated)が活性化されて、p53のセリン15をリン酸化します。
また、ATMはChk2(checkpoint kinase) をリン酸化して活性化し、Chk2はセリン20をリン酸化します。ATR(AT-and Rad3-related)も同様にp53をリン酸化する。
このリン酸化により、通常はMDM2と呼ばれるユビキチン化酵素と複合体を作っているp53が活性化されて、活性化p53はNoxa、PUMA、p53AIP1などの遺伝子を活性化し、 これらと複合体を作ることによってBcl-2によるアポトーシス抑制を解除する。
すると、BakやBaxが活性化され、ミトコンドリアからのシトクロムcの遊離が促進されて、 これがカスパーゼ9を活性化させてアポトーシスに導く。
もう一つの経路についてはTGF受容体の時の図にて説明します。DNAに損傷が起きてp53が活性化されるまでのところは上記に同じです。
活性化されたp53は細胞周期の制御に関与するp21、GADD45、14-3-3-σも誘導し、p21は、サイクリン-CDKに結合してその活性を阻害することによりS期に入るのを 抑制します。GADD45はS期への移行を阻害するとともに修復にもかかわっていると考えられている。14-3-3-σはG2期での停止に関与すると考えられている。
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