ヘルペスウイルス(1~8型)

ヘルペスウイルスは一度感染すると、三叉神経や仙骨神経節に潜伏感染の状態でとどまり続け、発熱、紫外線、疲れなどで潜伏ウイルスが活性化して再発する。

単純ヘルペスウイルス1型(herpes simplex virus-1:HSV-1)

  • 主に感染後に三叉神経に潜在し、口唇ヘルペス(冷たい痛み)を引き起こす。時には性器ヘルペスを引き起こすこともあります。
  • 重症化はヘルペス脳炎やベルマヒ(顔の片側の筋肉の弱さや麻痺による顔面の一部の動きの喪失)、角膜ヘルペス、カポジ水痘様発疹
  • 診断は視診がメイン。他に血液検査(IgGやIgM抗体が上昇しているかどうかを調べる)、PCR検査、Tzanck試験(ツァンク試験:水疱を採取し、ギムザ染色または他の類似の染色方法を用いて細胞を染色します。その後、顕微鏡下で細胞を観察し、多核巨細胞や異型細胞など、ヘルペスウイルス感染に特徴的な細胞変化の有無を確認します。)などがある。
  • 治療は抗ヘルペス薬の内服・外用を使う。

単純ヘルペスウイルス2型(herpes simplex virus-2:HSV-2)

  • 主に感染後に腰椎や仙髄神経節に潜伏し、性器ヘルペスを引き起こす。時には口唇ヘルペスを引き起こすこともあります。

水痘・帯状疱疹ウイルス3型(VZV)

  • 小児への初期感染では全身に水庖(水痘=みずぼうそう)を生じるが、一般的には軽症に回復する。
  • ウイルスはその後も単純ヘルペスウイルスのように、脊髄後根神経節内に潜伏感染の状態でとどまり、成人になって、免疫機能の低下が引き金となって帯状疱疹の形で再発する。
  • 水痘は飛沫感染ではなく空気感染なので広がりやすい。症状としては紅斑→水疱ができる。水疱がかさぶたになれば登校OK
  • 水痘はワクチン(生ワクチン)があり定期接種に組み込まれています。2回接種で、1回目は1歳~1歳3か月以内に、2回目は3か月以上開けて2歳までに行います。
    帯状疱疹も50歳以上であればワクチンがある。生ワクチンを1回皮下注かシングリックスを2か月間隔で2回接種。
  • 帯状疱疹は一般的には飛沫感染は起こらないが、症状が両側性になるなど重い場合はうつす場合がある。
  • 帯状疱疹では神経痛を伴い、重症化するとラムジーハント症候群(ベル麻痺と同じような顔面麻痺と、追加で聴覚障害やめまい)が起こることがある。
  • 水疱瘡の治療はアシクロビルや亜鉛華、帯状疱疹の治療はアシクロビル、バラシクロビル、痛みを伴う場合はプレガバリン等、アラセナ等の外用と内服の併用は帯状疱疹では保険上難しいのでジルダザック軟膏あたりがよく処方される。

エプスタイン・バールウイルス4型(EBV)

  • EBウイルスは、キッシングディジーズ(kissing disease)として知られる伝染性単核症の主要な原因ウイルスです。伝染性単核症は、特に若者や若い成人に多く見られる感染症で、キスを通じた唾液の交換が主な感染経路の一つであるため、このように呼ばれることがあります。
  • EBVは、唾液を介して感染するため、キスの他にも、同じ食器類の共有、咳やくしゃみによる飛沫感染などでも伝播する可能性があります。ほとんどの人は、幼少期に感染していて、生涯にわたってウイルスを体内に持ち続けますが、通常は無害で無症状です。
  • 伝染性単核症の主な症状には以下のものがあります
    • 発熱:伝染性単核症の患者の多くで見られる典型的な症状です。
    • 扁桃腺肥大:喉の痛みとともに扁桃腺が腫れることが一般的です。溶連菌に類似。
    • リンパ節の腫れ:特に後頚部(首の後ろ)のリンパ節の腫れが特徴的ですが、他の部位のリンパ節も腫れることがあります。
    • AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)の上昇:これらの肝機能指標の上昇は、肝臓への影響を示している可能性があります。伝染性単核症では、軽度の肝機能障害が見られることがあります。
    • 白血球数の増加:感染の反応として白血球数が増加することがあります。
    • 異形リンパ球の増加:伝染性単核症に特徴的な血液所見で、異常な形をしたリンパ球が増加します。
    • がんの発生に関連があることが知られている。一部のホジキンリンパ腫やアフリカの子供たちに多いバーキットリンパ腫
  • 診断は血液検査で以下の抗体を測定します。
    • VCA(Viral Capsid Antigen)抗体:IgM抗体(急性感染の指標です。EBVに新たに感染した場合に検出されます。)とIgG抗体(過去に感染したことを示し、生涯持続することが一般的です。)
    • EA(Early Antigen)抗体:EA抗体の存在は、活動性感染または最近の感染を示唆します。
    • EBNA(Epstein-Barr Nuclear Antigen)抗体:EBNA抗体は、感染後数ヶ月で形成され、ほとんどの場合、生涯持続します。過去の感染のマーカーとして使用されます。
    これらの抗体検査は、EBVの感染段階を特定するのに役立ちます。急性感染の場合、VCA-IgMが陽性であることが多く、EA抗体も陽性になることがあります。時間が経過すると、VCA-IgGとEBNA抗体が陽性になり、これは過去の感染を示します。

サイトメガロウイルス5型(CMV)

  • サイトメガロウイルス(CMV)はニューモシスチスと同じで日和見感染原因菌。一度体内に入ると生涯体内に残り、免疫が低下すると健康被害を引き起こします。
  • 妊娠中の母親がCMVに感染すると、ウイルスが胎盤を通じて胎児に感染することがあり、これが「先天性CMV感染」と呼ばれます。先天性CMV感染は、新生児に中枢神経障害、難聴、視覚障害(網膜炎を含む)などの深刻な合併症を引き起こす可能性があります。
    先天性巨細胞封入体症(Congenital Cytomegalovirus infection)は、妊娠中に母親から胎児へとサイトメガロウイルス(CMV)が感染することによって引き起こされます。なので、妊婦はCMVにかからないように気を付ける必要があります。
  • 健康な成人では、CMV感染は通常無症状か非常に軽度の症状を引き起こします。しかし、免疫機能が低下している成人では、咽頭炎、肺炎、網膜炎、腸炎など、より重篤な症状を引き起こすことがあります。
  • 治療薬はガンシクロビル

ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)

  • 一般に生後半年~2歳ごろまでに罹患する。
  • 39℃以上の高熱が3~4日続きます。この熱は突然に始まり、同様に突然に下がります。熱が下がった後に、軽い発疹が体(特に胴体)に現れます。この発疹は通常、数日で消失します。
  • 非常にまれに、高熱が引き金となって痙攣(発熱性痙攣)を起こすことがあります。
  • 特に治療は必要としない

ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)

  • HHV-6と似ており、突発性発疹と関連していますが、その病原性はよくわかっていません。

カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)orヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)

  • カポジ肉腫(Kaposi's sarcoma、KS)は、血管の異常増殖を特徴とするがんの一種です。この疾患は、皮膚や他の器官に紫または茶色の斑点や腫瘍を形成します。
  • 主に地中海沿岸地域や東ヨーロッパ出身の高齢男性に見られる古典的カポジ肉腫、サブサハラアフリカの一部地域に多いエンデミック(アフリカ型)カポジ肉腫などがあるが日本ではまれ

ウイルスの種類

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